舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第4章 奥州下り 監視する者とされる者
「わたしも好き。父に言われずとも、わたしが来たかった」と奥州訛りで泣いた。泣いたまま夜叉丸の首に腕を回し、抱きしめながら倒れこんできた。
 義経は毎晩のように女を換えながら伽をしている。義経のしていることで自分はまだその経験がないという劣等感が、その娘を拒絶しなかったのだろう。幾分毛深くも肌の透き通るように白いその娘は十六といったが、夜叉丸よりも経験者であった。夜叉丸は娘の導かれるままその柔らかさに驚きながら果てた。最後の瞬間、娘の顔に鬼姫の顔を被せていった自分の気持ちに夜叉丸は愕然とした。主筋ではないか、そう思った彼は今湧き上がった気持ちを心の中の五条兼永で斬った。
「あんた、上手いね」
 おそらく毎夜遠目から義経を監視していて、好色で好奇心の強い彼が女体を玩ぶのを眺めていたせいかもしれない。娘がほつれた髪を直しながら、そう言って夜叉丸の上に重なった。着物の下から出てきた夜叉丸の体は細いけれど思いの外筋肉質で逞しかった。娘は夜叉丸の胸を嬉しそうに弄った。そして、火照った裸を夜叉丸に密着させて甘えた。湿ってぬるりとした娘の下半身に嫌悪感を覚えた夜叉丸はそっと娘の身体を押し返して距離を開けた。
「上手いのか? 俺はおぬしが初めての女じゃ。上手いか下手かはわからぬ」
「うそつき」
 娘はまだ固い夜叉丸のものを力一杯握り締めて笑った。
「そうじゃ、頼みがある。あの源氏の者のいる館の間取りを調べてくれぬか。おまえなら怪しまれずに入れるかもしれぬ」
「なにか企みがあるんだね、いいよ」
 娘はそう言って夜叉丸の翳りのある暗い瞳に吸い寄せられるように顔を寄せ、口の中へ舌を押し込んできた。

 義経の寝所の位置がわかった夜叉丸は、幾晩かして夜陰に紛れ、忍び込んだ。
 しかし、義経の愛撫に身悶えする平泉の女の嬌声を床の下で聞きながら、夜叉丸は体の奥底から疲憊していった。馬鹿馬鹿しくてやってられぬ。帰って宿の娘でも抱くか、そう思ったときだった。女が帰っていったのと同時に、義経は大きな声で弁慶を呼んだ。
「いかがなされた。御曹司」
「弁慶、わしはもう嫌になった。いつになったら平氏を倒せる。秀衡殿は、いっこうに兵を貸してくださるとは言わぬ」
 駄々をこねる子供のような義経に困却した弁慶が慎重に言葉を選んでいるのが床下の夜叉丸にも伝わった。
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