舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第4章 奥州下り 監視する者とされる者
 いや、それだけではない。
 教経と鬼姫のいない生活がこれほど寂しいものとは想像していなかった。しかし、不思議なことに教経の顔は思い浮かべることができるのだが、どうしても鬼姫の顔を明確に思い出せない。あれほど同じ時を過ごしたのに、胸が熱くなるだけで輪郭だけしか思い起こせないのはどうした訳であろう。夜叉丸は、食事が喉を通らなくなった。その焦燥を解消する手段として、剣に打ち込むことを決めた。毎日千本素振りと立ち木打ちを自分に課し、雨の日も風の日も続けた。
 さて、肝心の義経はといえば判で押したように、昼間は奥州の名馬に跨り戦の稽古、夜は源氏の血を持つ貴種の子種を貰おうと土豪の娘が入れ替わり立ち代わり忍んで来るのを煩わしがらず相手にしている。
 よくもまあ、続くものよと呆れるくらい、義経は好色だった。甘え方も吐き気がするほど尋常ではない。甘える対象を全部奪われてから久しい夜叉丸に義経の心はわからなかった。
 屋敷から人目を避けるように人影が出てきた。覚束ない足取りで深い溜息をつきながら恍惚とした表情の娘が待たせてあった牛車に乗り込むのを確認した。泰衡の異母妹にあたる娘であることは既に調べてある。
――もし、義経の子を宿し男子であれば、その時はやはりその子を斬らねばならぬのか。この度の使命の中には含まれておらぬが、それは忠度様がここまで義経が好色だとは知らなかったせいだ。まぁ、どちらにせよ、俺は忠度様に従う
 今夜も変わりないと、夜叉丸は闇の中から戻って、自分のために敷かれた夜具にもぐり込んだ。まどろみ始めた時、何者かが夜叉丸の褥に入ってきた。もう少し気づくのが遅ければ、この家の娘を斬り捨てるところだったろう。音もなく抜かれた五条兼永の太刀は、月明かりに冷たく光った。
「どうした?」
 夜叉丸は娘に聞いたが、腰を抜かして震えるばかりであった。やっと落ち着いてから聞き出すと、この家の主人、つまり娘の父親に命じられて、伽にきたと告げた。金持ちで見映えよく、京言葉を使う客人だから、きっと都の高貴な出に違いない。関りを持って子を生せば、我が家の繁栄も叶うというものじゃと言い含められたらしい。
「それなら、藤原基成の衣川の館に行くがよい。源氏の御曹司がおる。俺などは……」
 話の途中で娘は激しく頭をふった。
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