舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第2章 平氏の剣
 松寿丸の父は出雲地方のとある荘園で荘官をしていた。かなり広い田畑もありそれなりの土豪であったが、松寿丸が五歳の時、その父が死んだ。叔父が家領を管理したが、数年立っても長男の柚木小一郎賢俊に返そうとはせず、そればかりかこともあろうにある夜手勢を引き連れ攻めて来た。太刀を抜いて飛び出した兄が真っ先に殺された。夥しいほどの火矢を射かけられ、屋敷内にいた者たちもひとりふたりと斃れながら、逃げ惑った。母が弟幸菊丸を庇ったまま流れ矢に絶命した。その中、権蔵という兄弟の世話をしていた下僕が証文や添書をまとめるや松寿丸と幸菊丸を裏から連れ出してくれた。
「都へ行き平家に訴えましょう。御父上が授かった添書に平忠度様の署名がございます。御父上は忠度様の家人になることで所領を安堵してもらったのです」
 平家が全国を制覇した時、地方の武士は争って平家の庇護を求めた。松寿丸の父もその一人だったのだ。
 執拗な追っ手をかわしながら、どうやって彼らが都までたどり着いたのか定かではない。街道を避けたために老人と子供たちにとっては想像を絶する過酷な逃避行であったろう。
 そして、都に着いた。権蔵も松寿丸らも初めて見る都であった。
 春は赤松の間に薄紅の桜が咲き誇り、秋には紅葉が池泉に照映する華やかな都も、冬は閑寂とした趣を見せている。しかし、普段に比べれば往来の人影も少ない冬の京ではあったが、松寿丸が育った山村と比べれば格段の賑わいと、そして目を背けたくなるほどの醜い厭わしさが同居していた。街角には西日本を襲った大飢饉のために餓えて死んだ者がそのままで放置されており、大通りでは外目からもわかる病人が大勢ぞろぞろと歩いていた。中には死人の衣服を剥いでいる盗賊まがいの者もいる。この都に住む者は、それが当然のように他人との距離をとりながら生活しているらしい。
 繁栄と荒廃の都、そして、松寿丸はその死臭漂う都に臆した。
 平忠度の屋敷もどこにあるのかさえわからなかった。
 松寿丸等は朱雀大路のはずれ、羅生門から入ってすぐにある若一神社の鳥居の前に佇み途方にくれながら行き交う人波を眺めていた。まだここは、西国から都へ入るためのとば口である。彼等は底冷えのする都に足を踏み入れたまま、動けなくなっていた。
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