舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第4章 奥州下り 監視する者とされる者
 元服など形式的なことはどうでもよい。俺にとっては、太刀の技をもっと極めることができさえすれば、それで良い。
 不思議なことに忠度のもとで精神的に安定した生活を送ったせいか、夜叉丸の秘められた異常な力が消失したようだ。柚木家に伝わる宝刀も忠度に預けた。忠度は一言「妖刀じゃ」と呟き何重にも鍵のかかる蔵に納め封印した。それで構わないと夜叉丸は思った。もっともまた、あの時のような極限状態に陥ればわからないが、あのおぞましさに身を委ねることなど耐えられぬ。技とは、訓練と工夫で磨き上げるものだ。夜叉丸は心の底からそう思った。
 今、夜叉丸自ら編み出した太刀捌きがもう少しで完成しそうである。構えを崩さぬ相手の視線を我が切っ先に惹きつけ、故意につくった隙に相手が無意識に反応した瞬間を叩く。簡単に言えば相手と完全に気を合わせ誘導し、その虚をつき相手を崩すのだ。
 夜叉丸の上弦の月をなぞるように動かす切っ先につられて一本取られた鬼姫が「姑息に惑わすのじゃな。でも一度しか効かぬぞ。もう、わらわには通じぬ」と鼻で笑った。
 笑え、鬼姫! 一度でよいのじゃ、真剣でやれば二度目はない。
 ただ、教経には躱された。
 それを眺めていた忠度が夜叉丸に落ちていた橡の実を投げ渡した。
「この橡殻を水に浮かせよ」
「忠度様、殻が浮けばよいのですか?」
 夜叉丸は、左の掌の中で実を転がしながらその重さを感じていた。この実の中が空洞であれば浮くはずだ。
――まだ気づかぬ内に自分を庇っているということか……
 重い橡殻の中の実を捨てよ、すなはち「身を捨てよ」ということは理屈としてすぐに理解できたが、どうすればよいか解らぬ。無謀と捨て身の区別もつかぬ夜叉丸であった。
 その日以来、夜叉丸は、忠度から貰った橡殻を守り袋に入れて首からぶら下げている。
 それを左手で握り締めた。

 義経に顔を知られている夜叉丸は、義経の館から適度に離れた所で宿を借りた。金は定期的に白河の目代から届けられてくる。半年過ぎた頃、夜叉丸は正直にいってこの監視の仕事に飽きてきていた。想像以上に平泉は、発展し賑わいを見せていたが、平和だった。京の刺激に慣れた夜叉丸にとって、平泉の生活は単調で変化に乏しい。好きな夏も短いし、松島まで馬で駆けて行ったが何度も忠度に随行して行った瀬戸内と違い海は冷たかった。
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