舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第3章 五条大橋の死闘
平清盛が力を入れる宋との貿易には大量の金が必要で、はからずも清盛と奥州に一大独立国を建設している藤原秀衡の利害が一致しているのだ。
 忠度が遮那王の処置を問うと、飼い殺しにせよと言った。頼朝のごとく京より遠ざけておればよい。善からぬことを企む輩から離しておけば害にはなるまい。奥州から一歩も出すなと言いかけて、何を思ったのか清盛が突然縁まで出てきて夜叉丸に声をかけた。
「おぬし、忠度に鍛えられて強くなったか? 直答を許す。面を上げよ」
 身分の高い者を恐れたことがない夜叉丸にも清盛の登場は大きな岩が頭の上から落ちてきたようで自失してしまった。武門の出自ながら太政大臣まで上り詰めた背景にはその軍事力だけではない強く人を惹きつける魅力が清盛にはあるのだ。驚いて声を出そうにも口が渇いて慌てふためく夜叉丸を見かねて忠度が助け舟を出してくれた。
「赤禿衆最強の鬼姫組にて、実際に組を束ねておりまする柚木夜叉丸でございます」
 清盛はちょっと思案すると、にこやかに表情を変え、夜叉丸をまじまじと見た。
「重盛のやんちゃ娘扇寿の組か……。没義道の餓鬼と呼ばれておるらしいの。この清盛に歯向かう者どもから与えられた最高の賛辞だと心得よ。そうか、その猛者どもを束ねておると申すか」
 我等が清盛公の剣であるとご存知であった。天にも上る気持ちとはこのことかと、夜叉丸は、清盛の計り知れない度量に全身が震えるほど酔わされた。
 しかし、忠度にも清盛が何故夜叉丸に声をかけたのかわからず、清盛の続く言葉を待った。
「ただ、誰が我欲のために源氏の忘れ形見に近づこうとするかわからぬ。誰も近づけず、身辺を見張るがよかろう」と清盛は歳の離れた弟に命じた。

 当時、京から遠く離れた奥州は夷の国だと差別されていた。京に住む公家の感覚で言えばそこに住むものは、下外の民であった。そこに院宣を出すことに大きな抵抗があったが、平氏の力で押し切った。右大臣九条兼実の日記「玉葉」では、この任官を「乱世の基」だと記した。都人から見れば、いかに平泉が栄えようとも俘囚の民のなせることだという差別意識が働いていたのだ。
ほどほどに歩けるようになった夜叉丸は、忠度から呼ばれた。
「身体の具合はどうじゃ」
「もう、太刀も振るえるほどに」
 夜叉丸は、覚慧の礼を述べた。弟は気を漲らせ栄西禅師の下に旅立っていった。
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