舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第3章 五条大橋の死闘
 夜叉丸の怪我が治り次第にと三人で約束していた鞍馬山攻めが、できなくなったと教経が悔しそうに柱を殴った。
 奥州の商人金売り吉次が遮那王を連れて行ったそうだ。僧正ヶ谷での武芸の鍛錬が発覚し、もうじき老師蓮忍の命で髪を剃り、出家する日が近づいていた遮那王が、自ら吉次に頼み込んだという噂も流れている。
――藤原秀衡が何故源氏の血を望む?
 ただの好奇心にしては、この平家を敵に回すことへの危惧の念を秀衡は抱かなかったのか? あるいは十七万騎の騎馬軍団を背景に、その覚悟ができたと考えてよいのか?
 夜叉丸の思考は最悪な方向へ向いていった。
 直ぐに足を引きずりながら教経と、覚慧が来ているという母屋に回った。
 丁度、忠度の兄である讃岐権守経盛が来ていた。忠度と一緒に庇に正座した覚慧の復命を聞いている。天治二年(一一二五)生まれの経盛は当代一の琵琶の名手経正や経俊、敦盛の父であり、京の都の治安に目を光らせている平氏の長老であった。
 夜叉丸と教経は挨拶を済ませ、覚慧のさらに一段後ろに出た孫庇に腰を下ろした。
「後三年の役では、陸奥守源義家が秀衡の祖父清衡に加担したために、奥州藤原氏の今の隆盛は源義家の力添えだと言えなくもない」
 経盛が櫟づくりの笏を片方の掌に拍子を取りながら打ちつけ独り言のように呟いた。
 遮那王はその源義家の血を引く。そう考えれば遮那王の奥州下りも筋が通る。
「こんな噂もあるやに聞く、遮那王の養父大蔵卿藤原長成のことじゃ……」
 身を乗り出した経盛が両手で皆を近くに集めるようにして声を潜めた。
 一条大蔵卿藤原長成は常盤の再婚相手である。つまり、遮那王の養父になる。彼の従兄弟藤原忠隆の息子基成は、奥州藤原秀衡の舅であった。長成が基成に遮那王の庇護を求めたという話である。心配する常盤の意を汲んでというか、むしろ、なかなか出家せず悪い噂ばかり聞こえてくる遮那王を手の届かないところに送り、自分に累が及ばないように手を打ったのだろう。察するに大蔵卿という立場から、吉次に働きかけたに違いないと経盛が忖度した。
「まだ、秀衡を突くわけにはいかぬ。夜叉丸、馬を引け。泉殿に参る」
 忠度が清盛邸に出向き、指示を仰ぐと言うや腰を上げた。
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