舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
アフィリエイトOK
発行者:鯉詞C
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

アフィリエイトする
マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第3章 五条大橋の死闘
「怪我をして帰ってきた禿に聞いて来たが、抜け駆けはいかぬ。かような楽しきこと、何故我を誘わぬや。あと少しで源氏の小倅を討ち取れたではないか」
 夜叉丸は薄れる意識の中で、唇をかみ締めながら胸に遮那王の顔を刻みつけた。

 夜叉丸は、忠度の屋敷の西側にある郎党の起居する棟で療養していた。何かと夜叉丸の世話を焼きたがる忠度の下女たちによる献身的な看病が続けられた。が、武蔵坊弁慶にやられたところが思いのほか重傷だった。
――早く太刀を握りたい!
 逸る夜叉丸の気持ちを察したように教経が「何も考えず、養生せよ」と毎日見舞いに来る。そして、鬼姫も教経と合わせたように一緒に来ては動けぬ夜叉丸を弄って遊んだ。
 鬼姫はあの五条大橋の夜を語りたくなかったが、教経が調べてきたことを一緒に聞くことは吝かではなかった。むしろ、遮那王について教経が語るときは、いつの間にか耳をそばだてていた。そのことに本人はまだ気づいていない。そんな鬼姫を「もう牛若のやつは夜這いに来たか」と教経が揶揄し、鬼姫から殴られていた。
「やつはひとつ上、平治元年(一一五九年)生まれの十六じゃ、小さいゆえ歳下だと思っていた。剣は……」
 太刀捌きは義経が修験者との実戦の中で編み出した独自のものらしい。毎夜抜け出しては僧正ヶ谷へ行き、何者かわからぬ修験者達とその腕を磨いているらしい。後をつけた覚慧からの報告であった。気合の変わりに平家一門の名を呼び打ち込む姿は鬼気迫るものがあり、暫く覚慧は隠れたその場を動けなかったことが書き認められてあった。
「夜叉丸の怪我が治ったら、今度は我等が鞍馬山に攻め込むぞ、遮那王の動きは、見切った。非力さを速さでごまかしておる。次は逃さぬ」
 決して大言壮語する教経ではない。夜叉丸は、同年ながらその教経の強さに憧れた。嫉妬はしない。確かに剣の目標ではあるが、夜叉丸は教経の一本気な性格が好きで堪らないのだ。

 十五日程経って漸く夜叉丸は起き上がれるようになった。
「思いのほか早くよくなったな、まるで獣のようじゃ」
「何を抜かす教経、毎日鬼姫に擽られたり、上に跳び乗られたりされるのは、もう御免じゃ。弁慶に打たれた時よりも辛い。起きた方がましじゃ」
「今、母屋に覚慧が来ておる」
 教経が真顔で言った。いつも手紙で遮那王の近況を報告していた覚慧が急遽鞍馬山を降り直々に忠度と内謁している。
32
最初 前へ 29303132333435 次へ 最後
ページへ 
小説家になろうのサイトにて1カ月で2000アクセスを達成しました。
ページの先頭へ