舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
アフィリエイトOK
発行者:鯉詞C
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

アフィリエイトする
マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第3章 五条大橋の死闘
「この気の強さよ。ますます気に入ったぞ、弁慶」
 若者が袖で顔を拭きながら、立ち上がった時だった。
 勢いよく駆けて来た白馬の騎乗から矢が放たれた。男と弁慶は思わず後ろに飛び退いてその矢を避けた。橋の床板に刺さった矢はいつまでも唸り続けた。
「何者ぞ!」
 弁慶はその矢に込められたただならぬ勢いに声を荒げた。
「都を騒がす不逞の輩は、その方等であったか。平教経が成敗してくれる」
 教経の抜いた太刀がまっすぐ天を指し、篝火の炎を反射して青白く輝いた。
――よき所をみんな持っていかれた
 夜叉丸は、教経の登場にほっと気を緩めた途端、忘れていた激しい痛みに襲われた。
「平氏め!」
 弁慶が錫杖を背負っていた大薙刀に持ち替え、二三度扱くと熾烈な速さで袈裟懸けに打ち込んでいった。教経は正眼に構えたまま髪の毛一本ほどの間合いを切った後すばやく飛び込む。すかさず繰り出す突きに弁慶は堪らず鉄下駄を脱ぐと、後ろ向きに転んで逃げた。
 教経はそのまま向きを変え、稚児姿の男に向かって水平に太刀を払った。教経の鋭利な太刀筋はまるで風を氷結させるような凄まじい冷気を感じさせた。
 鴨川に映る月が凍り、流れる雲にその身を隠した。
「おまえが源氏の牛若か。清盛の叔父上に情けをかけられ生き延びている恩も忘れ、何故、山で大人しく経を読んで暮らさぬや。喜べ! 今宵がおぬしの命日となる。覚悟せよ!」
 牛若と呼ばれた男はなりふり構わぬ必死の形相で身をかわすと思い切り後方へ間合いをきり、教経の太刀が届かぬ欄干の上までかろうじて逃げた。鬼姫を相手にしていた時のような余裕は微塵もなかった。
「何を言うか、平教経。清盛は母を陵辱し、子まで産ませた。この恨み忘れぬ。しかし、聞きしにまさる腕じゃわ。まさか平氏にこのようなつわものがいたとは……。今宵の勝負は預けた。また会おうぞ」
 遮那王と弁慶は鮮やかに闇の中へ紛れていった。
「鞍馬山の猿か、あやつらは。逃げ足だけは立派なものだ……」
 教経は太刀を鞘に納めながら振り向いた。鬼姫は呆気に取られて橋桁の上に座り込んでいる。そして夜叉丸自身は息が荒く意識を失いそうになっていた。教経は仲間外れにされた恨み言のひとつでも言いたそうであったが、二人を見ている内にその気持ちが失せたようだ。
31
最初 前へ 28293031323334 次へ 最後
ページへ 
小説家になろうのサイトにて1カ月で2000アクセスを達成しました。
ページの先頭へ