舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第3章 五条大橋の死闘
 そろそろだと判断した夜叉丸は、弓隊へ合図した。一斉に弁慶に向かって矢が放たれようとした瞬間、闇の中から甲高い叫び声のような笛音が響いた。脳味噌を鷲掴みされるような歪な音色であった。最初に夜叉丸から見て対岸、弁慶の後ろに位置した弓隊が乱れた。五人の弓隊が乱入者にあっという間に峰打ちを受けて崩れた。まるで一陣の風であった。乱入者は倒した者の弓矢を奪い取ると一度に二本の矢を番え闇の中に向けて次から次へと放つ。正確な矢で男は残りの弓隊を壊滅させた。欄干の上に飛び乗り狙いを夜叉丸に向けた時には、禿衆の弓隊はほとんど戦意を無くしていた。
「何者じゃ、源氏の者か?」
 夜叉丸は、剣を立て、その影に隠れて矢を防ぐように構えた。距離は五間ほどしか離れていない。
「鞍馬山の天狗よ。覚えておけ」
 やや小柄で白い上衣に紫の大紋袴という稚児姿の若者はそう耳障りな声で笑うと無造作に矢を軽く放った。夜叉丸はすばやく右に体を躱しながらその矢を真二つに斬って落とした。
 すぐに、橋の下と後ろに待機させていた禿衆に夜叉丸は「かかれ!」と命じた。一斉に下から突き出した槍襖に稚児姿の男は弓矢を捨てると反対側の欄干に跳躍して、太刀を抜いた。右手をだらりと下げ、左手一本で軽く太刀先を禿衆に向け、顔の半分で笑っている。歳はそれほど夜叉丸や鬼姫と違わないであろうその若者の小馬鹿にした態度に夜叉丸は憤りを隠せなかった。鬼姫を振り返ると彼女は、もうその男に向かって颯と駆けていった後だった。途中で上段に構えながら鬼姫が跳ぶ。鋭い気合とともに斬り下ろした時には男はもう薄笑いしながら橋の真ん中へゆらりと舞い降りていた。
 夜叉丸は直ぐに橋下の槍隊を対岸に上げ挟み撃ちに陣形を整えようとした。
 しかし、弁慶がおおっと大声を出して鉄の錫杖をぶんぶん振り回しながら突進すると、夜叉丸が選びに選んだ精鋭の禿衆があれよあれよと言う間に打ち据えられ逃げ惑う。まるで大人と子供の力の差があった。気づくと立っているのは鬼姫と夜叉丸の二人だけである。
 鬼姫は、何度も男に斬りつけていたが、紙一重のところで全てかわされ肩で息をするぐらい翻弄されている。すでに鬼姫の隈取りが汗で流れ始めていた。
 熱くなっている……、夜叉丸は手助けに行きたかったが、弁慶に阻まれ焦りが募った。
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