舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第3章 五条大橋の死闘
「夜叉丸、これでは卑怯じゃ。半分は帰せ」
 鬼姫の機嫌が悪かった。
「敵の正体もわからぬのに、用心に越したことはない」と夜叉丸は鬼姫の言うことを取り合わなかった。
 暮れ六つの鐘が鳴ってから、一刻が過ぎた。鴨川の流れは静かだった。辺りは暗くなったが、十六夜の月は、時々雲に隠れながらも明るく地上を照らし続けている。夜叉丸は、篝火を焚かせた。五条大橋は更にくっきりと照らし出された。
「こんなに明るいと出て来られぬのではないか?」
「いや、聞こえぬか? 足駄の音が近づいて来る」
 足駄は、高い二枚歯のついた下駄のことである。その音がだんだん大きくなった。鉄下駄であった。
「やあやあ、拙僧は熊野の別当湛増の子、叡山西塔に住む武蔵坊弁慶と申す法師でござる。今宵はまた、にぎやかでござるな。六波羅の赤禿衆とお見受けいたす。罪なき者を甚振り、都を跋扈する清盛の犬ども! 今宵はその増長した鼻をへし折ってくれようぞ」
 筋骨逞しい六尺以上の身の丈に、鉄の錫杖を振り回しながら鉄の足駄を踏み鳴らす。その姿で威嚇していた。顔を白い五条袈裟でつつみ、黒糸縅の腹巻を着け大太刀を佩く姿は、まさに荒法師であった。
――餓鬼法師が! 熊野別当とは熊野三山の統括のみならず、熊野水軍の統率者ではないか
 夜叉丸は白々しく聞いた。何故湛増の子がこんな汚らしい法師などやっているとその嘘臭さを軽侮した。鬼姫が太刀に手をかけ一歩前に出た。
「その通り、六波羅の鬼姫じゃ。わらわの鼻をへし折ってみよ」
「おお、平重盛殿のご息女扇寿姫様であらせられるか。まこと愛らしい顔の鬼じゃ」
 弁慶は、そう言って高笑いをすると、持っていた錫杖を片手でぐるぐる回し始めた。
 鬼姫の白い肌が紅潮してきたのを見て、夜叉丸は一抹の不安がよぎった。「冷静になれ!」と夜叉丸が声をかける前に鬼姫が動いた。
「参る!」
 太刀をすばやく抜いた扇寿姫は、一気に駆け抜け、三度弁慶と斬り結んだが、四度目で後方に弾き飛ばされ尻餅をついてしまった。
「これは、失礼つかまつった。鬼姫殿、お怪我はありませなんだか」
 弁慶の大仰な言い草に、鬼姫はキッと立ち上がり、またむかって行こうとするのを夜叉丸が肩口を掴んで引き止めた。
「夜叉丸、放せ!」
「頭を冷やせ、少し休んでいろ。今度は俺の番だ」
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