舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第3章 五条大橋の死闘
しかし、武士にとって髻を切られたり、太刀を取り上げられたりの恥辱に皆口を閉ざし、屋敷に引き込んでいる者がほとんどであるらしい。噂だけが先行し、口さがない京の町人の間でそれが大きく膨らんでいるようだった。そのためなかなか確かな情報が集まらなかった。
「いくぞ、夜叉丸。われらで都の鬼退治じゃ」
「行っても構わぬが、明日の夜にしよう」
「今すぐにじゃ」
 鬼姫は太刀に手をかけ、すっくと立ち上がった。
「準備がある。鬼姫衆の中で手練た者を集めたい」
「準備?」
 怪訝そうに鬼姫は、夜叉丸の顔を見た後、怒りはじめた。
「われらだけでよい。われらより強い者はこの京にはおらぬ」
「ああ、しかし、確実に絡め取りたいからな。失敗したくない。鬼姫衆で腕の立つやつらを三十人ばかり昼間のうちに忍ばせておく」
 鬼姫はあからさまに不服そうな表情を見せた。
「正々堂々と真っ向からの勝負だ。それで勝たねば意味がない。平氏ばかり狙うということは、源氏の残党かも知れぬ。われらの敵ぞ。きっとそうじゃ」
「邪魔はせぬ。好きなだけ真っ向勝負をすればよい。俺は、俺のやり方でやるだけだ」
 鬼姫が口を尖らせて黙った。怒った顔は、少女が大人になる過程を見せていた。すっきりした切れ長の目と合った夜叉丸は彼女の眩しさに息が詰まった。長い睫毛の間から見える深い褐色の瞳に見惚れた。彼はそっと自分の気持ちを心の奥に押しやった。
「教経には内緒ぞ。奴が入れば、よき所をみな持っていかれてしまう。手柄は、鬼姫衆のものじゃ。よいな!」
 くどくどしく念をおして帰る鬼姫を見送りながら、夜叉丸は教経を思った。剣技が飛躍的に成長したことを自覚できる夜叉丸であったが、教経は常に何段も高いところにいる。最近教経の体から発散されていた殺気が消えた。その分、剣を構えたときに凄みが増したような気がする。まるでいくら追いかけても追いつけない逃げ水のような存在だ。

 夜叉丸は、弓隊十五名を五名ずつの組にして五条の橋の周りに配置した。五名を橋の下に乞食の変装で待機、残り十名は正面から夜叉丸と供に突っ込む手筈にした。
 鬼姫はえらく気合の入った隈取りを目の縁に入れていた。夜叉丸はもうその顔に慣れたが、鮮やかな色で素顔を隠すことにより鬼にでもなったつもりなのだろうか。これは鬼姫が自分自身で考え出した見知らぬ相手と戦闘態勢に入る時の化粧法だ。
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