舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第3章 五条大橋の死闘
 教経は、髪を揺らして小走りに遠ざかる少女を見送りながら、夜叉丸を揶揄した。さらに彼女が触れた頬が熱いと半ば惚気るように戯けた。
「泣いていて可哀相だったから声をかけただけのこと。名など聞かぬ」
 頬が熱いなどと、勘違いも甚だしいと夜叉丸は怒った。確かに年頃の男ならば等しく動揺しそうなほど可愛い娘に違いないが、夜叉丸は興味を示さない。
「優しいのう、その優しさを俺にも向けてくれ。奥歯が痛くて堪らぬ。な、背負ってくれねば、一歩も歩けぬ」
「戯けた事をぬかす奴じゃ。そんな痛みなど一発殴れば消える。ほれ、顎を出してみよ」
 拳を振り上げた夜叉丸に「許せ、許せ」と教経がふざけながら逃げる。
 あっ、と教経は短い声を発した。勢い良く吐き出した血の混じった唾と一緒に欠けた歯が石の階段で撥ねた。
「あの巫女が触ったせいか? 痛みも無くなった」
 不思議な体験をしたものだと首を傾げる教経を夜叉丸が言葉で嬲った。
「きっと、白山神社の御祭神だったのかもしれぬな。俺が柿をお供えしたゆえ、教経の悪い歯を抜いてくれたのじゃ」
「まさか? しかし、可愛い御祭神じゃった。そうは思わんか?」
 夜叉丸は、教経の誘いに興ずることもなく「いいかげんにしろ」と顔を顰めた。
 教経が突然何か思いついたように顔をほころばせた。鬼姫といい教経といいそんな表情をした時は碌な事がないと、かつての彼等の浅慮が引き起こしたわずらわしさを思い出し夜叉丸は辟易とした。
「ひょっとして、もしやおぬしは、衆道…… 男の方が好きじゃったのか?」 
 相手は叔父上であろうと教経がふざけたので、夜叉丸は一発思いっきり殴ってやった。教経は避ければ避けられるものをわざと衝撃を殺して拳を受け、大袈裟に後ろに吹っ飛び、「悪い、わるい」と繰り返しながらいつまでもにやにや含み笑いをしていた。
 しかし、教経がそう思うほど忠度との関係は、強い絆で結ばれている。
 昼間は武術の稽古に明け暮れる夜叉丸であったが、夜は夜で兄弟二人、忠度の前に座らされ、兵法書の輪読をさせられていた。忠度は夜叉丸のことを文武一如の武者に育てようとしているように窺える。枠に嵌められることが嫌いな夜叉丸であったのに、忠度には従順であった。忠度が望む方向に自分をわざと合わせていったのは、おそらく師であり敬愛する忠度を喜ばせようと意識していたためだろう。
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