舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第3章 五条大橋の死闘
 五年が過ぎた。都で平家に仇なす者達からは没義道の餓鬼と恐れられ始めた鬼姫衆ではあったが、夜叉丸が朱雀大路を歩いていると年頃の娘は皆立ち止まり十五歳になった彼の若武者ぶりに溜息を漏らした。おそらく美しかった母親に似たせいなのかもしれない。しかし、彼はどんなに眉目形の良い娘とすれ違おうとも全く関心を示さない。
 とある秋日、虫歯に悩む教経に付き添い、痛み平癒の御札を貰おうと夜叉丸は白山神社の参道を歩いていた時である。急な石段の両側には樹影が広がり昼間でも薄暗い。季節のせいで紅葉に彩られてはいるが、濃い血の色にも見える。不気味に湿った赤であった。
 一瞬、前を歩く教経が息を呑んで立ち竦んだ。緊張して身構えた教経を避けた夜叉丸は、前方に十二三歳の髪の長い巫女が泣きながら階段を降りてくるのを見た。色の白いやけに細身の小柄な少女であった。
 何故か、その巫女が気配を殺して景色と同化していたために、教経の気づくのが遅れたのだ。人の気配に鋭く反応する二人である。
「今、あの巫女を怖がったであろう? 隠しても俺には教経の心の中などお見通しだ」
 夜叉丸の挑発に教経は真っ赤な顔をして怒ったが、歯が痛いのか、振り上げた拳を途中から頬に当てて唸った。夜叉丸は、ふんと鼻で嘲りながら、懐に入れていた三個の柿をお手玉のように両手で操り、佇んでしまったその巫女に近寄った。
「おぬしの姿にあの大男が臆してしまったようじゃ。それに歯が痛いと大騒ぎしておる。可笑しいであろう? 笑ってくれまいか? おぬしに泣き顔は似合わぬぞ」
 夜叉丸は、他意も無く微笑みながら一番形の良い柿を彼女に差し出した。
 眼が合った。眉を剃り薄化粧した彼女は桃の種に似た眼に一杯涙を溜めたまま、瞬きもせず小さな口を半開きにして夜叉丸に見惚れた。そんな自分に気づいた彼女は、貰った柿を大事そうに胸の前で抱きかかえると、顔を赤らめ何も言わず夜叉丸の横を駆け抜けていった。ちょうど教経の横をすり抜ける時、右手でさっと彼の頬を撫ぜた。
 驚いた教経は、呆けたように口を開けたまま、その巫女の後姿をいつまでも目で追った。
「ちょっときついが、よく見ると可愛い娘じゃな。大きくなれば美人になるぞ。どうじゃ、おぬしに見惚れておったが、名は何と申した? 次の逢瀬の約束はしたか?」
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