舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第2章 平氏の剣
――資盛中将の妹だと! 平重盛卿の娘扇寿ではないか。あの六波羅の鬼姫…… 重盛公は信心深く清盛入道にも意見できるお方だと聞いていたが、まさか重盛公の命令なのか?
 基房はまるで命乞いでもするように、六波羅だけはと繰り返した。六波羅は平家一門の拠点である。
「まさか摂政殿の髻を切るわけにもゆくまい。今日のところはこの辺で許してやるが、次はないと心得よ」
 鬼姫はそう言い捨てると振り向いて基房を囲った輪から出て行った。背中に金糸で刺繍された大きな揚羽蝶が夕日を跳ね返した。
 基房がその紋様を見たときには既に命令をきかない跳ね上がりの禿から彼の髻が切り取られ地面に捨てられた後であった。


 夜叉丸は、一人で平重盛邸裏庭にある蔵の前で立ち木を相手に木刀を振り回していた。頑丈な鍵のついたその蔵の周りは鬱蒼とした木立のせいで昼間でも薄暗い。ここは時々鬼姫と激しい打ち込みの稽古をする場所でもあった。彼は、何本もの木の枝に高さを変え吊るした薪を相手に撃ち込みの練習をしている。
 ふと、背中に鋭い殺気を帯びた風を感じた。振り向くと同時にその風の音をすばやく木刀で袈裟懸けに斬った。投げつけられた扇子が木刀に跳ね返されて地面に落ちて撥ねた。
「なんだ教経か、いつ来た? 危ないではないか」
「夜叉丸よ、まるで後ろにも目があるようじゃな」
「まったく、油断も隙もない」
 この程度では、雑作もなかろうよと庭に下りてきた狩衣姿の教経の周りに爽やかな風が吹いた。落ちた扇子を拾う教経の物腰に隙がなかった。夜叉丸が不意をついて打ち込もうとしていたのをまるで見透かしたように笑った。
「鬼姫の姿が見えぬが?」
「そこの蔵の中で謹慎中じゃ。藤原基房卿の一件は重盛様のご命令を実行しただけだが、それを知った入道相国にひどく怒られた。わが孫ながら情けないと」
 我が子のこととなると、日頃は冷静で調和のとれたと評判の重盛が、資盛の受けた恥辱に短慮にも摂政藤原基房の牛車を襲わせた。そのことを清盛に咎められた。
――それよりも、重盛の息子たる者が、下馬もせず摂政に道を譲らなかったのは、取り返しもつかぬ失態である。十三にもなるというのに、資盛には礼儀をわきまえさせよ。殿下には、この清盛から謝っておく
と激しく叱責した。
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