舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第2章 平氏の剣
 ひとりの従者が禿の直垂に刺繍された蝶を見て、「…鬼姫組」と声を震わせた。彼の顔から血の気が引いていった。すぐに我に返ると担いでいた荷をその場に放り出し、我先にといった態で逃げた。基房を警護する一団から、その男の臆病さを蔑む失笑が漏れた。
 基房に「女のような」と思われた方の禿が低く激しい声で叫んだ。
「かかれっ!」
 その合図と同時に放たれた矢が風を切る音も大きく威嚇するように牛車の簾を跳ね上げた。先端に笛のついた鏑矢であった。突然鬨の声があがり、牛車の屋根に大きな石でも降って来たような衝撃が二つ走った。あらかじめ木の上に潜んでいた別の禿が二人牛車目掛けて飛び降りて来たのだ。いつの間にか牛をはずす者や悲鳴を上げて逃げ惑う下僕たちを追い回す者が現れた。どこにこれだけの人数の赤禿が潜んでいたのであろうか、五十人近くの禿に牛車は囲まれた。下僕の中には太刀を抜いて抗う者も何人かいたが、悉く三人掛かり、四人掛かりで追いかけられ打ち据えられた。馬上から引き落とされる者もいた。禿達が持っているのはただの六尺棒ではない。皆一様にその先端部へ鋼を打ち付けて覆っていた。基房の警護の武士達も次々に打ち据えられて地面に押さえつけられたまま髻を落とされていく。
「夜叉丸、わらわにもひとりくらい残しておけ」
 鬼姫が笑いながら棒捌きの恐ろしいほど激しい童に声をかけた。無駄な動きがなく一番多く相手の太刀を叩き落していた。
「もう誰も残っておらぬ」
 夜叉丸は不貞腐れた愛想のない顔で振り向いた。
「仕方ない。夜叉丸、帰ったら太刀の稽古じゃ。暴れられなかった分、付き合え」
 鬼姫はそう言うと、禿達が牛車を取り囲んだ輪の中へ入っていった。
「餓鬼が! 調子に乗ると怪我をするぞ」
 禿の一人が頭を割られた。とっさに逃げたので命に別状はなさそうだが鬼姫組の初めての犠牲者が出た。警護の武士の中でも一際身体が大きいその男を取り囲んだ禿達が手こずっていた。長刀を得意としているらしく実戦の経験に裏打ちされた胆力も持っていた。遠巻きに囲んだ禿達数人が少しずつ後ずさるのと入れ違いに、夜叉丸と鬼姫がすっと前に出た。
「洟垂れ小僧じゃとて容赦はせぬぞ。うぬらの所業! いくら平氏といえどもかような狼藉は赦し難し」
 その大男は鳥羽の国久丸といい、警護隊の長であった。怒りが体中から溢れ真っ赤な顔をしていた。
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