舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第2章 平氏の剣

 少し汗ばむ、風の止まった昼下がりであった。松寿丸と幸菊丸の兄弟、それに権蔵は重盛邸の庭先に控えている。小半時ほど待たされていた。正座の松寿丸と幸菊丸は落ち着かぬ様子で辺りを見渡すと、後ろにある舟遊びができるほどの大きな池が蕩蕩とした晩春の日差しを照り返し煌いていた。
 しばらくして重盛が一人の公達を伴って現れた。忠度である。
 柚木家の所領について重盛の家来よりざっと事のあらましが報告された。それによると忠度の手勢五百騎が叔父と略奪に加担した柚木の親類縁者を全員討ち取ったとのことである。続いて相続者である松寿丸の処遇について話が及んだ。成人するまではかの地を平家の直轄領として預かり、その間松寿丸ら兄弟は忠度の家人として奉公せよ。そんな内容だった。
 忠度が座した廊下の上から松寿丸と目を合わせて頷いた。
――忠度の手勢五百騎じゃと、あいつは俺に何も言わなかった。
 早く強くなり自分で仇を討ちたいと思っていた松寿丸は、拍子抜けした。
 しかし、これで京に残れる。これからも鬼姫や教経と一緒なのだ。あいつらと剣の修行ができる。実はこの喜びの方が大きく複雑な心境になっていた。
 会えば喧嘩口調になり火花を散らす間柄ではあったが、何故かふたりと別れたくなかった。それだけに忠度の家人になれたことは幸いだった。顔が自然と笑ってしまう。
 弟の幸菊丸が不思議そうに兄の顔を覗き込んだ。
 権蔵も念願がかなってよほど嬉しかったのだろう。その純朴な老人は声をかみ殺しながら肩を震わせて泣いた。
「まっこと、重盛様は噂通り権衡保たれた立派な方じゃ」
 権蔵は思わず心の中の言葉を口に出し、手を合わせ、重盛を拝んだ。
 皆の顔に安堵の色が広がった時、騒がしい足音にその場にいるみんなが振り向いた。鬼姫が飛び込んできたのだ。
「父上、ありがとうござりまする。これでこれからも夜叉丸とともに武芸に精進できまする」
 重盛は評定の場に出て来た娘に一瞬顔をしかめたが、彼女が可愛くてたまらないらしい。悪意のない我が儘が天真爛漫に育っているのは、父重盛の親としての甘さからに違いない。
「おう、扇寿か。姫の望みどおりになったようじゃな」
 重盛は自分の裁定ではないかのように娘に声をかけた。昨夜、さんざん鬼姫から彼がこのまま京に居られるようしつこく頼まれていたのだ。
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