舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第2章 平氏の剣
 頬を膨らませ怒った顔を見せながらも鬼姫が訝しげに首を捻った。
「おぬしの父上によばれておる」
「例の土地の話か? もう出雲へ帰るのか?」
「そんなことはわからん」
 彼の帰りたくないと苛立つ心が即答させた。
 教経が寂しそうに松寿丸を見つめている。何か言いたげであった。短い期間ではあったが、全力をぶつけあう濃い関係の中で三人の間に何かが芽生えつつあった。
 松寿丸よりやや背の低い鬼姫が片手で彼の襟をつかんで強く引き寄た。
「帰らんでもよい。わらわの家来になれ。家来になってずっとここにいるのじゃ」
「たわけ! 家来になど、誰がなるものか。俺に命じるな!」
 松寿丸に尊厳を傷つけられて鬼姫は怒りを露わに、地面を木刀で強か打ち下ろした。砂利が刎ねて四方に飛び散っていった時にはもう背中を向け早足に帰ろうとしていた。
――だれが家来などになるものか
 しかし、そうは言ったものの彼は土地を継承することの重さがわかるほど成長していなかった。権蔵が悲しむかもしれぬが、執着もない。忠度の側にいたいという気持ちが強い所為かもしれぬ。ここで自分の成長が実感できることに喜びすら感じているのだ。それは京に上ってくることの契機となったあの忌まわしい夜を忘れさせてくれた。
 突然、鬼姫が思い出したように振り返った。視線の合った松寿丸はなぜか圧倒されて怯んだ。鬼姫が笑っている。松寿丸は嫌な予感がした。
「ずっと考えておった。山犬のごとき暗い目をしたそちに名を与えてしんぜよう。夜叉丸はどうじゃ、強くなったおぬしに相応しい。めでたい松などという名は捨てよ。それならば教経も文句はなかろう?」
「うるさいっ、俺は柚木の松寿丸じゃ」
 今度は松寿丸が背を向けて駆けだした。
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