舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第17章 粟津浜の春霞
――生きてみよう
 生きたいと心に決めた途端、巴御前はもうひとりの我が子に無性に会いたくなった。鎌倉へ人質に出した義高は頼朝の妻である北条政子にも気に入られ、大姫とも大変仲睦まじく平穏な日々を過ごしていると風の噂に聞いた。だが義仲が討ち取られた以上、頼朝は人質の処分を決定するだろう。清盛に助けられた頼朝自身のわが身を振り返れば、結局殺すしかないに決まっている。
「たとえ縄目の恥辱を受けようとも生きて鎌倉へ下り、一目義高に会いたい」
 巴が更に泣き崩れた。
「鎌倉にも心のある者がおろう。それに頼朝公も二位殿も人の親、心を尽くして訴えれば義高殿の命も助けて下されるやもしれぬ」
 同じ源氏ではないかと、鬼姫が巴を抱きしめたまま力づける。
 鬼姫の温もりに包まれて、巴は決心した。もう泣いてなどいられなかった。

『源平盛衰記』には、巴御前は鎌倉で打ち首になるところ、侍所の別当和田義盛の嘆願で許され、義盛と再婚したことが書かれている。「母が力を継ぎたりけるにや、剛も力も双なしとぞ聞こえける」と伝えられる義盛の三男・朝日奈三郎義秀は義仲の胤ではないかという説もあるが……
 
「木曽殿の追捕に義経は、出て来なかったな」
 一の谷へ向けて並走する鬼姫が面白くなさそうに聞いてきた。
「やつは、院の警護を法皇から直々に任されたらしい。すこぶる評判がよいらしいぞ」
 鬼姫が怪訝な顔をして涼しい表情の夜叉丸を覗いた。
「義仲軍のような乱暴狼藉が一切無いそうだ。京でなにか不始末を起こせば、一族皆殺しにするというほど厳しい命令が鎌倉の頼朝から出ているらしい。頼朝は義仲を見ていて、何が大事なのかよく分かっているようだ。ただ、その実行者が義経だから京では、義経の人気が上がっている」
 鬼姫が心持ち安堵したような表情を浮かべたのを夜叉丸は見逃さなかった。
「義経はどうするのであろう。このまま京に居るのか」
「義経の敵はあくまでも我ら平氏だ。懸命に院宣を取ろうと院に働きかけているそうだ」
「早く攻め上ってこい! 一ノ谷は難攻不落。五条大橋での恨み、晴らしてくれようぞ」
 鬼姫が、上って来いと言った。三種の神器と安徳帝は平家の内にある。平氏のいる海上が、この国の都なのだ。そしてその都は全てにおいて堅固である。上れと口に出したのは、そんな意気込みを鬼姫が持っているという現れだった。
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