舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第17章 粟津浜の春霞
「そうか? 俺も、同じ立場だったら、静には、同じ事を言うぞ」
「だから夜叉丸も女子の気持ちがわからぬのよ」
 普段は、自ら女ではないと公言して憚らぬ鬼姫であった。
――都合のよい時だけ女になる
 心の中で夜叉丸が悪態を吐いたとき、「何か申したか?」と鬼姫が顔を向けた。
 巴は、「どこへなりともいけ」とあまりにもしつこく兄の兼平からも言われて振り切るように馬に飛び乗った。
「最後の戦さ見せ奉らん」
 唇の動きを読まずとも巴の叫びは、夜叉丸の元に届いた。鬼姫が夜叉丸の制止するのも聞かず隠しておいた馬に跨り駆け出していった。

 巴が駆けて行った丁度そこへ武蔵国の怪力で有名な御田の八郎師重の三十騎が出てきた。巴は其の中へ駆込み、八郎に並走するやいきなり首を掴んで馬から引き摺り下ろし、自分の鞍の前輪に押し付け一気に首をねじ斬って捨てた。まさに巴は戦いの中で死のうとしていた。
 突然、巴御前の前を一陣の風が粉雪を舞い立たせたかと思うと、師重の郎党の何人かが一瞬に斬られて馬から落ちた。巴を取り囲んでいた坂東の武者は新手が来たと勘違いしたのか蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「巴! よくぞここまで生きていた。倶利伽羅峠での決着、今こそ付けようぞ」
 赤地錦の直垂を着た鬼姫は、巴御前の前を駆け抜けるや馬上太刀を構えて誘った。逆光の中で構える鬼姫の太刀が冷たく光った。巴御前は幻を見ているのかと思った。
「平家の姫が、なぜここに? よいわ、相手にとって不足無し。参る」
 巴は、馬に鞭を当て、鬼姫を追った。

 今井兼平が掲げた義仲の旗のもと、近くに潜んでいる逃げ延びてきた義仲兵が集まるのを夜叉丸は見た。その数、三百。
 義仲は、最後の戦を決心したらしい。そのまま源氏の甲斐の一条次郎が作った囲み、兵六千余騎に向かっていった。
 義仲の名乗りが追走する夜叉丸にも届いた。
「我こそは左馬頭兼伊予守朝日の将軍源義仲なり。甲斐の一条次郎とこそ聞け。義仲討って、兵衛佐(頼朝)に見せよや」
 木曾の三百余騎は、六千騎の中を駆け破り、外へ出た時には五十騎程になっていた。
 そして、次には土肥の次郎実平が二千余騎で控えていた。
 
 巴は遠くに義仲の奮戦を感じながら鬼姫と剣を合わせていた。さすがの巴も連戦の疲れが太刀先に出ていた。鬼姫は、そんな巴を甚振るようにじわじわと攻め立ててくる。
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