舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第17章 粟津浜の春霞

 寿永三年(一一八四)一月十八日
 夜叉丸のもとへ京に放った多くの密偵から次々と戦況が届けられた。
 義仲は、宇治川、勢田川の橋板をはずして、戦の中心になると考えられる勢田へ今井四郎兼平を八百余騎で配備。一口へは三百騎。そして宇治川へは、五百騎を配備した。
 対する鎌倉軍は、大手の勢田に蒲の御曹司範頼、義経は搦手として宇治川へ回る。
 志賀の山や長等山の雪も消え、ちょうどこの季節の川が、増水していた頃である。
 白波が激しく水勢盛んに流れ落ち、浅瀬の瀬枕は大きく滝のようで、水流がぶつかり合って激しく渦をまき、水の流れも速い中を、義経は馬で渡河したようだ。
「そのままの勢いで京に押し入ったか。義経らしい攻め方じゃ、やはり主力は馬か……」
 密偵の報告を受けていた夜叉丸は熱くなりながらもつい独り言が出た。
 そして、義仲敗走。
 刻々と入ってくる鎌倉軍の戦い振りに居てもたってもいられず視察諜報を願い出た夜叉丸の後を鬼姫が追って来た。黙って抜け出したと鬼姫が笑った。義経の実戦采配に関心があることも事実だったが、夜叉丸は、義経がどれほど成長したのかも気にかかっていた。また、鬼姫は巴御前を思うと、「太刀を合わせた時に感じた不思議な気持ちがよみがえる。こんな世でなければ、友になれたやもしれぬ」と、顔を輝かせた。
 夜叉丸らは、途中、義仲の噂を聞いた。
 僅かな手兵を率いて鴨川を六条から三条河原へ出たところで義経軍に遭遇し、何人かの兵を失いながらも京を抜け出したそうだ。神無の森から関の清水を抜け、琵琶湖畔の粟津の浜に向かっているらしい。範頼に敗れた兼平も確かな情報でその場所に逃げていると聞いた。義仲七騎、兼平五十騎。まさに互いを捜し求めているような動きである。
 夜叉丸は粟津の浜に急いだ。

 馬を飛ばし義仲に追いついた夜叉丸と鬼姫は半町ほど離れた林の中に身を隠すと、兼平の手を取る傷心の義仲が見えた。琵琶湖から吹く雪の混じった風に体が冷えてくる。
 夜叉丸は、彼らの唇の動きで交わす言葉を読んだ。
「ここで……供に……死のう……と」
 義仲の口に合わせて夜叉丸が低い声を出した。
「巴は……、女なれば、どこへ……でも行け。木曾殿の最後の戦が……、女連れで……あっては、世間の物笑い……になるなどと義仲も女子の気持ちのわからぬ男じゃ」
 鬼姫が義仲の巴を思いやる言葉に憤った。
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