舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第16章 京を捨てて
「神璽寶剣とり具し、建禮門院も主上と同じ輿に奉る」(台記・藤原頼長の日記)
 七月二十五日、平家の都落ちが決まった。宗盛は、三種の神器と安徳天皇を奉じ、西国の海上に都を移した。日和見を決め込む法皇への抵抗でもあった。主だった平氏の公達が京を落ちたことを確認した夜叉丸は、「白旗を掲げながら、京の街に火を放て」と、傀儡子の親方である恵比須の藤兵衛に頼んだ。
 藤兵衛は、配下の傀儡衆に義仲軍の格好をさせ、京中に火を放たせた。折からの飢饉に、京の兵糧は底をついた。
「六波羅・西八條等の舎屋一所残らず、併せて灰燼に化しをはんぬ。一時の間、煙炎天に満つ。昨は官軍と称し、縦えば源氏等を追討す。今は省等に違い、若しくは辺土を指し逃げ去る。盛衰の理、眼に満ち耳に満つ。悲しむ哉」(玉葉)
 盛衰の理、眼に満ち耳に満つ。悲しむ哉と、藤原兼実は日記に記してある。
 七月二十八日、義仲軍無血入京。
 すぐさま院は自らの保全のため、平家追討の院宣を義仲に出した。
 つまり、反乱軍から出発した義仲軍は、功賞の僉議により、官軍の立場を得たことになる。
 ただ、義仲は、単独入京ではなかった。入京した軍勢は義仲以外にも源行家、甲斐源氏の安田義定、更に近江源氏の山本義経などがいる。所詮寄せ集めの源氏集団に統制はなかった。木曽から持ってきた兵糧も底をつき、民家に押し入り、食べ物を略奪する雑兵が続出し始めた。養和の大飢饉に加え、夜叉丸に好意を持つ傀儡子集団の働きで京の街は無秩序に拍車をかけた。辻々でも町衆に変装した鬼姫衆が義仲の退京を扇動していった。夜叉丸の焦土戦術は、京の大衆の気持ちの中に源氏に対する嫌忌感を起こさせることに成功した。
 京の町衆は、平家を恋しがった。平家がいたころは平家の侍も近寄り難く好きではなかったが、着ているものまでは剥いでいかなかった。源氏は粗野で凶暴すぎる。帝がいる都に住む者の誇りが許さなかった。平家の公達の美しかったことよ、鎧の金具は太陽を照り返し、兜の鍬形は馬の歩みに揺れ輝いていたではないか。

 夜叉丸は静達に平泉へ行くよう命じた。
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