舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第15章 倶利伽羅峠 対決巴御前
 その時、赤ん坊と我が身を助けられた母親が恐る恐る声をかけてきた。お礼をしたいが何もない、あるのは自家製でつくった酒だけだが、是非飲んでいってくれということだった。

「美味いぞ、この酒は」
 兼平は土間で酒の肴を用意している女に声をかけた。事情を聞いた亭主が囲炉裏端に座した四人に酌をしている。
「強い酒じゃ」
 夜叉丸が盃を飲み干すのに少し顔を顰めたのを兼平は見逃さなかった。
「最雲殿は、かなりの使い手と見たが、酒は強うないようじゃの」
 そう言って笑ったが、すぐに気分が落ちるのが見えた。
「そうなんですよ。兄者は酒がからっきしだめで、おいらが代わりにいただきます」
 宮毘羅が調子に乗って手酌で何杯も飲むのを夜叉丸が頭を軽く殴って窘め、もっと兼平に酒をすすめるよう命じた。宮毘羅は夜叉丸とは正反対に酔えば酔うほど明るくなる。彼は場の盛り上げ役に徹した。
「なにか心配ごとでも……」
 夜叉丸は、兼平を見た。
「なんでもない。失礼した。風邪気味なのかもしれぬ」
 兼平の目が泳いだ。彼が嘘をついているのは分かった。ただ、夜叉丸等はこの今井兼平を既に知っている。だからこそ近づく隙を窺っていたのだ。暴れ牛のことは偶然の出来事だったが、利用させてもらった。兼平は義仲の養父中原兼遠の次男で、木曽四天王の一人である。義仲と兄弟のように育てられている。
「そういえば、最近源氏の志田義広殿と新宮十郎行家殿が義仲殿をたよってこちらへ来ていると聞いたが」
「詳しいの……」
 一瞬兼平は猜疑の目を夜叉丸に向けたが、すぐに宮毘羅がそれを察知しておどけて気を逸らせた。
 酔いのまわった兼平はまた押し黙った。だがその胸の内を夜叉丸は知っている。すでに情報は掴んでいたのだ。
 頼朝は十万の兵を信濃に送り、頼朝に疎まれたふたりの叔父を渡すか、あるいは義仲の子義高を人質として差し出せと要求して来た。「どうせ将来頼朝とは決着をつけなくてはならぬのだからここで戦うべきだ」と今井兼平は主張し続けた。
 しかし、義仲の情の深さは、自分を頼って来た叔父を見捨てることはできずに頼朝の娘婿としての体裁をとりながら息子義高を人質として差し出した。人払いしたところで兼平は、幼馴染の義仲を殴ろうとした。その振り上げた手をいつの間にか後ろに立っていた妹の巴に止められた。
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