舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第15章 倶利伽羅峠 対決巴御前

 さらに夜叉丸は足を伸ばした。夜叉丸と鬼姫そして宮毘羅の三人は初春の越後国府に入った。どうしても会ってみたい人物がいたのだ。その男を何日か付け回し、人性、性質、習性を探ろうとした。義仲と合戦になったとき、その中心になる人物である。
 夜叉丸達は、畦道のような街道を歩いていると、荷役用の牛が暴走しているところにちょうど出くわした。その先に籠に入った赤ん坊が泣いている。野良仕事をしていた母親がそれに気づいて赤ん坊を庇ったが、その場で動けなくなったようだ。間に合わぬと思い、夜叉丸と宮毘羅は跳びこんでむかってくる牛の角を捕まえた時だった。「助太刀いたす」という鋭い声とともに若い武士が飛び出すと片方の牛の角を操って、方向を変えた。二人では手が足りなかったかもしれぬ大牛であった。その間に鬼姫が身軽な動きで母子を安全な位置に移動させた。手助けしてくれた若者は器用に牛を宥めると、追いかけてきた牛の持ち主に渡した。
「申し訳ございませぬ。焚き火の火が牛の尻に跳ね、驚いて駆け出した次第でございます」
 牛の持ち主は震えながら言い訳して地面に平伏した。斬り殺されるかもしれないと思ったのであろう。男は、地面に穴を開けるほど額を擦りつけていた。
「よい、気にするな。大事にいたらなかったのじゃ。もう、行くがよい。だが、戦になったらその牛を貸せ。人より役に立ちそうじゃ」
 若者はその牛の背を撫でて豪胆に笑った。
「斉の国は田単の火牛の計でござるか。いや、お見事でござる。一人で防げるかどうか不安なところでした。さすが越後牛は大きくて力強い」
 夜叉丸より七八歳上に見えるその男は、協力して一つのことを成し得た奇妙な連帯感で夜叉丸に笑いかけた。
「見かけぬ顔じゃが」
「失礼いたした。手前は袖の浦の住人で最雲と申す者でござる。京で商いをしておりましたが、母が亡くなったとの知らせがあり、帰る途中にて」
「鮮やかな身のこなし、武士ではないのか……?」
 夜叉丸は自然体を装い、豪快に笑い飛ばして見せた。男はじっと夜叉丸を眺めて、表情を柔らかくした。自分の目を信じるという風である。男は、厭味の無い爽やかさで笑った。その人の良さに夜叉丸は少しの心の痛みを感じたほどである。
「御無礼いたした。拙者、源義仲が家臣今井四郎兼平と申す」
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