舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第2章 平氏の剣
 田舎では見たこともない鳳凰模様の入った錦の狩衣を無造作に着ていて、身分の高そうなことは一目でわかる。それに、平清盛の妻時子の弟である大納言時忠が「平家にあらざらん者は、皆人に非ず」と、言い放った時期である。
 今や、国中の誰もが烏帽子の被り方から衣紋の入れ様まで平氏の公達を模倣して平家一門に近づこうとしていた。彼は、まさしくその平家一門のようだ。それにしても……、
――ただの気まぐれなのだろうか?
 松寿丸は忠度の心を推し量ったが理解できなかった。ただ、忠度の自分に向けられる眼差しに自然と心が熱くなった。
「鬼姫の名が泣くぞ」
 鷹のように鋭い気合を発する教経は、確かに尋常な腕前ではない。自ら鬼姫と豪語する扇寿が一本も取れず打ち負かされている。まして、松寿丸など歯が立たなかった。どこから攻めようかと考え迷った時、そんな彼を忠度が叱責した。
「一本の木に向い、その内の赤き葉ひとつ見て居れば、残りの葉は見えぬ。教経の全てを観よ。葉ひとつに目をかけずして、一本の木に何心なく立ち向かわば、数多の葉残らず目に見えてこよう」
 教経の太刀勢を心で感じよという声に反応して、縮んでいた松寿丸の構えから力が抜け背筋が伸びた。松寿丸の木刀の震えが止まり、体の内から自然と力が漲ってくる。松寿丸の体が朧気に光を放ち始めた。教経の顔が険しくなり、表情から余裕が消えた。
 今まで受けに甘んじていた教経に、忠度は「攻めよ」と合図した。あまりの力量差に教経は、攻撃を控えるようにあらかじめ言い聞かされていたのだ。半ば不満気味であった教経の体が弾けた。目にも止まらぬ速さで連続に打ち込まれ松寿丸は必死にかわした。が、下段から払われ後ろに飛び退いたとき、尻餅をつき無防備になってしまった。
――やられた
 松寿丸にぞっとするような鳥肌が立ったときには、教経はもう木剣を上段から振り下ろして切っ先が額に当たる寸前であった。
 夜叉丸の腰に下げた太刀からいきなり鍔鳴りが響き渡りはじめたのと同時だった。
 悲鳴に似た叫び声をあげて教経の木刀を額の前でかろうじて受けた時、夥しい閃光とともに大地が大きく揺れ始めた。
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