舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第15章 倶利伽羅峠 対決巴御前
 そして、義仲である。
 寿永二年(一一八三)のはじめ、信濃にあった義仲は北陸道への進出をはかった。
 夜叉丸は鬼姫と来るべき義仲との戦のための下工作を忠度に命じられて、越前に下った。
 まず、初戦になる火打城工作を鬼姫衆と手がけた。養和元年(一一八一)九月に平通盛軍が木曾義仲追討のため越前から加賀に進撃したところ、火打城を守る平泉寺長吏斉明は平家方から寝返って、背後から通盛軍を襲撃し敗退に追い込んでいる。
 夜叉丸と鬼姫等は、夜陰に乗じ城内に忍び込むと一気に斉明の寝所を襲った。目の辺りに恐ろしげな濃い青の隈取りを入れた鬼姫が太刀を振り回しながら感情を顕にして、城主である斉明に脅しをかけた。鬼姫のそのあまりの激しさにこの優柔不断な城主は思わず失禁した。同行した鬼姫衆も演技と知りながら体が萎縮したほどである。ついに平家が城を取り囲んだ時、内部から手引きする確約をさせた。
「斉明よ、我々はいつでもおまえを見張っている。ここまで誰にも悟られず参ったことを思ってみよ。首を刎ねることなど容易き事。おまえだけではない。おまえの一族はこの世から抹殺されるであろう。しかし、約束を違えたりせねば逆におまえとおまえの一族の栄達は望みのままじゃ。一門のわらわがうけあうのじゃから信じよ」
 鬼姫が斉明の首に太刀の刃を当てゆっくりと引きながら、不敵に笑った。滴り落ちる血が斉明の着衣を汚し続けた。
「……同じ女武者なれど巴殿とは大違いじゃ」
 斉明が首を押さえながら震える小声で吐き捨てた。
「巴とは誰じゃ?」
 鬼姫はもう一度斉明の左胸に太刀先を押し付けた。斉明は胸を反らせながら後退りした。
「義仲殿の愛妾巴御前を知らぬのか? 先の横田河原の戦では、七人の武将を討ち取った。七人じゃぞ、信じられるか? それになかなかの美人で心根もやさしい。六波羅の鬼姫殿とはまるで光と影……」
「ならば次の戦でその巴御前とやらの首を討ち取りおぬしの前に晒してみせようぞ」
 鬼姫の目が獲物を狙う獣のように光ったのを見逃さなかった夜叉丸は、ふっと溜息をつくと余計なことを言った斉明の頭を後ろから殴った。
 夜叉丸は、金剛と摩虎羅等数人を城に残し、斉明に対して精神的圧迫をかけ続けるよう命じた。裏切った時はその場で斉明の首を刎ねよと申し渡した。
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