舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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発行者:鯉詞C
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第14章 静御前の神技
 嫣然として静は深く息を吸い込むと教経に三間半ほどの距離を隔てて向かい合った。
「何をするのじゃ? こうすればよいのか」
 酔っ払い顔の教経がそれでも夜叉丸に言われた恰好で笑いながら立っている。
「教経、決して動くまいぞ」
 夜叉丸が言い終わるや静は懐から棒型手裏剣を出し、目にも留まらぬ早さで投げ始めた。
「やめろ! たのむ、やめてくれっ!」
 教経の悲鳴が上がった。静が七本投げ終わると同時に教経が腰を抜かしたようにその場にへたり込んだ。酔いが醒めてしまったようだ。黒光りする手裏剣が教経の人型そのままに畳へ突き刺さっていた。しかし、すぐに気持ちを入れ替えた教経は体をほぐしながら立ち上がると、自分の胸を叩き、「見切ったゆえ次はここを狙って投げよ」と静に命じた。
 背中を向けて立っていた静は軽く頷くと扇を閉じ、腰を捻ってそれを鋭く投げた。教経は抜く手も見せずそれを太刀で素早く斬り落とした。傷の入った扇を拾い上げると教経は「もっと良き品を買ってやる」と笑った。
「さすが、平家一の武将能登守教経様でございます」
「静、わらわにも投げさせろ!」
 今まで無口だった鬼姫が目を輝かせて静の傍に寄った。武技に秀でた者に寛容な鬼姫が静を認めた瞬間であった。直垂の着崩れを直しながら教経が間に入ってきた。
「死ぬかと思ったぞ、夜叉丸。今度はおぬしが、静の的になれ」
「平泉ではそれを見世物にして、見料を取っていた。もっとも俺が投げて静が的だったがな」
 教経と鬼姫が顔を見合わせた。奥州での夜叉丸のことは謎が多い。彼の口数が少ないこともあるが、二人は言葉を失った。
「よくぞ、夜叉丸に相応しき妻じゃ。祝いじゃ、そちと夜叉丸のために熊野の屋敷をしんぜよう。わしの気持ちじゃ受け取ってくれ」
 そこは、東大路通りにある新熊野神社のすぐ近くにあった。
 しかし、気づくと忠度から譲り受けた広い屋敷は、いつの間にか静のいる一座の溜まり場になっており、まるで夜叉丸の家人か下僕のようにふるまっていた。初めて門をくぐったその日には、蛯子の藤兵衛がいつもの妖しい笑いを浮かべながら配下の者を従えて出迎えてくれた。夜は二人きりにさせてもらえるが、それは静の兄者挌の男たちが夜陰に紛れて盗賊を働くためだ。
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