舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第2章 平氏の剣
 次の日から実戦に近い厳しい修行が本格的に始まった。場所は重盛邸の横の小路から鴨川の東、鳥辺野にある祇園社の境内に移された。鳥辺野は、平安期から墓地、葬送の地として知られており、人通りの少ない所である。餓死した者、行き倒れ、多くの死者がそのままで放置されていることも珍しくなかった。そのため自分の死を理解できない霊が昼間でさえ死霊となって行き交って見えた。松寿丸と鬼姫は忠度からその死霊を成仏させよと命じられた。一刀のもとに成仏させられなければ、わが身が危うくなると脅された。松寿丸は鬱蒼とした林の中に踏み込み、無心に手ごたえのない死霊に向かって木刀を打ち下ろした。
 
 ある日平忠度はひとりの若武者を連れて来た。鋭い目付きで松寿丸と鬼姫を交互に睨みつけている。まるで抜き身の太刀のごとく、近づけば一刀のもとに斬られそうな殺気をみなぎらせていた。その若武者に松寿丸は見覚えがある。
――若一神社の前で、乞食の死霊を斬った奴だ
 彼の放つ殺気の強さを跳ね返すように松寿丸は睨み返した。彼も松寿丸を見て一瞬驚き眉を動かしたが、すぐに表情を戻した。
「今日より教経も仲間に入る。ただし、相当強いぞ」
 忠度が涼しい顔で紹介した。平教経であった。平清盛の弟、門脇少納言教盛の次男で、話を聞けば同じ年齢ではないかと、松寿丸は改めて驚いた。
「噂ばかりの教経が、どれほどの者じゃ。手加減はせぬ。打ち据えられて泣くでないぞ」
 猫のような俊敏さで鬼姫は無口な幼馴染に木刀を打ち込んでいった。しかし、教経は無駄のない体捌きで鬼姫の木刀をかわすと、不敵に笑いながら背負った錦の袋の中から四尺弱の樫の棒を取り出して受け太刀にまわる余裕をみせた。
 松寿丸は二人のやり取りと忠度の嬉しそうな顔をかわるがわる眺めた。
 不可解なのだ。何故、この男は俺に優しくしてくれるのであろう。そして、強い。太刀筋を直してもらったときに自然と伝わってくる強さを感じる。それも力ではなく理に適った強さだ。添書に書いてあるという死んだ父の主の名前が平忠度ではなかったか。もっと年寄りを想像していた。
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