私立全寮制御堂学園物語 ダークサイドバージョン
第11章 第十章 凶器
気丈な将大が泣きはらした目を拭いながら、担任教師の車に乗るのを見送り、純也は唇を噛んで、猪瀬を見上げる。
険しい眼、風になびく髪。
「僕のせいだ。岡本専務をこの件に巻き込んだのは僕だ。もっと危険性を認識すべきだったよ」
†
「お父さん、お父さん! お父さんっ!」
少年の涙混じりの声。霞む視界に《息子》の泣き腫らした顔が見える。
「将大……」
将大は目を開いた《父親》にすがりついて泣いた。
「……僕、二回も……お父さんを亡くしたくないよ……」
小学生にしては大柄で、しっかり者だったはずの将大が、小さく見える。こんなにも、幼かったのか。ほんの子どもだったのか。二年前引き取った日から、寂しさも悲しみも少しだって見せなかった将大が。
「将大……。お父さんは大丈夫だよ。わしは運が強いんだ。ほら、この通り何とも……あ痛ッ……」
肩の銃創は手術して数時間しか経っていない。力瘤など見せようとすれば麻酔が効いていても痛んで当然だった。
痛みで顔をしかめる泰山と、心配そうに身を乗り出す将大。二人はその直後、顔を見合わせ、小さく笑いあった。
†
うめいて寄りかかる涌坂の体から清家は身を引き、涌坂は膝から崩れ落ちてうつ伏せに倒れた。
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NIGHT
LOUNGE5060