私立全寮制御堂学園物語 ダークサイドバージョン
私立全寮制御堂学園物語 ダークサイドバージョン
成人向完結
発行者:とりさん
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:---

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私立全寮制御堂学園物語 ダークサイドバージョン 第8章 第七章 悲劇
 虫の知らせ、というやつだろうか。
 純也をはじめとして将大、亮平、猪瀬が、コミュニティスペースを目指して自分の寝床なり部屋を出た時間は、一分とずれていなかった。どうやら、裕が浴室に向かった時間からも半時間と遅れていなかったようだ。
 純也の叫び声を一番に耳にしたのは、うたた寝をしていた当直の後藤田さんだった。後藤田に一分と遅れず、ほとんど同時に猪瀬らも風呂場にたどり着いた。コミュニティスペースに近づけば純也の叫ぶ言葉の意味は鮮明に伝わり、皆血相を変えて駆けつけたのだった。
 猪瀬が純也に代わって裕を抱え、心拍を確かめ、意識の回復を試みている間に後藤田が救急車を呼んだ。救急急車にみんなが乗るわけにいかない。救急員は大人の猪瀬を選んだが、猪瀬は純也の背を押して彼を同乗させた。二人乗ることも可能だったが猪瀬はそうせず、救急車の出発を見届けるとすぐ将大と亮平を呼んで、一緒に自分の車で病院に向かった。

 猪瀬のインプレッサは闇夜にターボの咆哮を響かせ、山道をタイヤを軋ませて疾駆する。
 「……スピード、大丈夫ですか?」
 知らず知らずお互いの手を握りあい、後部座席に並ぶ二人。病院までで一言だけ、亮平が発した言葉だ。
 「……それは信用してもらっていい。……だが、僕は!」
 猪瀬は厳しい目で、フロントガラスに映る自分をにらみつけている。
 (最低だ……僕を頼りにしてくれていたのに!)
 病院のベッドでは、左手に痛々しく包帯の巻かれた裕がベッドに横たわり、純也が丸イスに座って裕の小さな手を握っていた。後ろに、将大と亮平が寄り添って立っている。
 裕の意識は戻らず、生死の境を彷徨っていた。
 二時間ほどして、両親が病院に到着したが、純也はベッドサイドを離れず、裕の手を離さなかった。深夜、一度だけ、純也は裕が、自分の手を強く握り返すのを感じた。はっとして、医師の顔を見る。わずかに、裕の口が動いた。
 「純ちゃん。ごめん……」
 そしてまた、裕の意識は闇に沈んでしまった。

  †

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