私立全寮制御堂学園物語 ダークサイドバージョン
第1章 第一章 宣告
「動くな!」
血相を変えて立ちあがった裕と将大を、涌坂は凄みのある怒声で制する。二人は、凍り付く。
高い天井の闇に滲む梁から伸びたロープに首吊りにされ、宙に浮く亮平と純也の苦悶に歪む顔、信じられない程のスピードで蒼白に変わっていく。突っ張った足は置き場なく揺れる。
「やめ……!」
再び腰を浮かせた将大のあごを、涌坂は革靴の先で仮借無く蹴り飛ばした。将大は裸の体を冷たいコンクリートの床に仰向けに伸ばし倒れた。
「そんな簡単に人は死なないもんだ。自殺するのに首吊り選ぶガキ多いけど、死ぬまで何分かかるか知ってるか」
倒れ伏し呻く将大の代わりに、涌坂は、床にうずくまり恐怖に目を見開く裕に向かってそううそぶいた。
涌坂は陽焼けした太い腕に巻かれた金色の腕時計と、吊られた二人の顔を交互に見ている。清家は、その涌坂の真意を推し量ろうとするように彼の顔を見、吊られた二人の、力を失っていく足の指先を見ていた。
二人のうちでは体重の重い亮平の意識がほとんど消え、泡の混じった唾液の垂れる口が開き、足のけいれんも止まった時、涌坂は清家に鋭く目配せした。
まるで軍隊のツーマンセルのように、素早く動く涌坂と清家。涌坂は亮平を、清家は純也を背後から抱える。亮平はグッタリと動かず、純也は恐怖に前後を見失って暴れる。清家は無慈悲に彼の下腹部を打ち、動きを止めた。
「亮平……君」
痛む体を何とか起こした将大が、絶望感にわななく口から、弱い声を漏らした。
「生きてるよ。見ろ」
涌坂は、ぐったりと身を横たえる亮平のあごを、大きな手で押し下げ、少し頭が上がるようにする。亮平の口が開くが、明らかにわかる呼吸は感じられない。あごを押さえる手を革靴の先に変え、湧坂はゆっくりと立ち上がり、ズボンのジッパーを下ろした。
「何……するんだよ……やめ、て……」
将大にももう、立ち上がって涌坂を制止しようとするだけの気力はなかった。恐ろしかったのだ。
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NIGHT
LOUNGE5060