僕は知っている
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成人向完結
発行者:とりさん
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/18
最終更新日:---

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僕は知っている 第11章 第九章 友也と唐川、そして僕と、黒崎カラス
 僕は今、十五階建ての高層マンションの屋上で、柵を乗り越えて、下界が見渡せる建物のヘリのブロックの上に立っていた。季節は春だったが、この場所の風は吹き飛ばされそうに強く、そして冷たい。

 僕の予想に反して、唐川は僕に何もしなかった。車中では一言も会話を交わさなかったが、ポルシェが僕のアパートの前に乗りつけた別れ際、「今日はわざわざどうもありがとうございました」と挨拶されて大いに戸惑ったほどだ。正真正銘の筋者に頭を下げられたのは、生まれて初めての経験だった。あとで友也の状態と、残された写真を見てから、彼がどう思ったかは、僕の想像を超えている。

 その後の僕は、あの日のエネルギーはどこへやら、ますます抜け殻のようになって、無為に日々を過ごしていた。酒もタバコもやらない僕がすることと言えば、ただだらだらと寝ることだけだ。二つの日の二つの出来事が、『M.A.D.POLICE STATION』の脈絡のないシーンが、時々脳裏を行き来するだけだった。

 友也との行為の、あの日から三週間後、唐川から電話がかかってきた。友也のからだに、変化が生じたというのだ。それはわずかな陰部の発毛だった。思春期の入り口に立った男の子が、恥ずかしくてその事実を隠したがるような出来事だ。身長もセンチ単位で伸びていた(いつと比べたのかは聞かなかったが)そうだ。唐川の電話の声は、相変わらずの低音ながら心なしか軽く、穏やかだった。

 まあ、僕の精一杯の努力は、無駄ではなかったわけだ。

 それからも唐川は、三週間から一ヶ月ごとに僕に電話をかけてきた。いわく背が伸びた。声が変わり始めた、というような報告だった。幸いにして、僕は二度と、友也少年の、変わってしまった声を聞くことも、成長し、逞しくなった姿も、見ることはなかった。
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