僕は知っている
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成人向完結
発行者:とりさん
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/18
最終更新日:---

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僕は知っている 第8章 第七章 僕と唐川、そして友也-1
 僕はエレベーターで三階に上がり、三○二号室の前に立った。そしてインターフォンのチャイムを押してみた。返事はない。
 僕はごくりと唾を飲み、鍵を鍵穴に差込み、回した。ロックが外れる男がした。ドアを開く。玄関の照明は灯っていて、中に入ると目の前に少年が待ち受けていた。

 愛らしい丸顔、少し伸びすぎた眉にかかりそうな髪、潤んだような丸い瞳、白い肌。ほんのりと赤い頬。まだ思春期の扉を叩くか叩かないかの、未成熟な肢体。太りすぎず痩せすぎずの、腹部から腰、腿にかけての絶妙な曲線。彼はどこかの私立小学校の制服のような、半袖のカッターシャツと紺の半ズボンを身につけていた。
「黒崎先生、ようこそ」
 間違いない。電話とは少し違って聞こえるが、あの絶妙の掠れ声だ。僕の欲情をくすぐる声だ。
「君が、電話の子なのか。友也君なのか?」
 考えてみれば、電話の少年は一度も名乗らなかった。唐川は当然僕が彼の名を知っていると思って話していたようだが。
「そうです。五十嵐友也と言います」
 これは幻覚でもなんでもない。少年は確かに目の前に存在している。どこか儚げだが、確かに存在していた。
 僕の記憶の奥の小部屋の扉が軋んでいた。もう少しで開きそうなのに、鍵が錆びついて開かないのだ。
「まだ思い出しませんか?」
 少年はにこやかに僕に訊いた。
「いや……でも君の顔には見覚えがあるような気がするよ」
「僕もですよ、先生」
「つまり、君も確信を持てないということ? 僕を知っているということに」
「これから確信を取りに行くんですよ。先生、靴を脱いで上がって下さい」
 友也は僕の手をとった。柔らかな小さな手だ。その感触にも、覚えがあるような気がする。いや、ただのデジャヴか……。
「ずいぶん汗をかいていますね。先生」
 握っている僕の手のことを言っているのだろう。
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