僕は知っている
第7章 第六章 僕と電話の少年
「僕には何かの罠のように聞こえる」
「罠?」
「かわいい声の、見知らぬ少年から電話がかかってきて、僕が少年に欲情することを知っていて、僕とセックスしてもいいという。世の中にそんなシュールレアリスティックな、都合のいい展開があっていいものだろうか」
僕はわざと、大人と会話するような言葉を選んだ。心臓の鼓動を落ち着かせながら。
「先生を罠にはめる気なら、とっくにそれができるだけの材料を、僕は持っていると思わない?」
「確かに君の言うとおりだ」
「罠かも知れないけど、もしかしたら、かわいいかどうかは保証しかねるけど(笑い声があった)男の子を抱けるかもしれない。そんなチャンスに賭けてみる気はない?」
「君の方にはどんなメリットがあるんだろうか」
「何度も何度も言っているけど、僕は先生に僕を思い出して欲しい。そこから全てが始まるんだ。そして決着がつく」
「会えば思い出すだろうと、そう言うんだね」
「うん、きっと」
「わかった。会おう。場所や時間は、君が決めてくれていい」
「ありがとう。三十分以内に、もう一回電話をかけるから、どこにも出かけないで」
「オーケー」
電話が切れた。
32
NIGHT
LOUNGE5060