僕は知っている
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成人向完結
発行者:とりさん
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/18
最終更新日:---

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僕は知っている 第6章 第五章 僕と黒崎カラス
 評者達のコメントは、自分の当時の感覚としては的外れなものばかりだった。結局は「ただ新しい、よくわからない」と言って逃げているだけのようなものが多かった。結局はよく売れた、話題になったから賞を得た、ということだろう。
 ただ一人、今も漫画界のメインストリームにいる作家が、これはと思う評を残していた。

「鬱屈した暴力的衝動を爆発させる、エネルギーに満ちている。特に思春期のとば口に入った少年達が、ほとんど例外なく感じる、内奥に秘めた、直後に控える成長への爆発的なエネルギーのやり場、それへのカタルシスを与えるという意味で、この作品は一般化できる力を持っている」

 いやいや、意味不明の、力任せの作品が、たまたま時流に乗っただけさ。

 「M.A.D.POLICE STATION」は、二年を経て急速に人気が衰え、作品自体も力を失っていった。毎回新しいものを提示し続けるような作品は、そう長くは続かない。そして黒崎カラスは、「M.A.D.POLICE STATION」の連載を終えると、しばらくは全く何も描けなくなった。二年あまりも、ほとんど家に引きこもって何もしなかった。古い言葉で神経衰弱、今で言う鬱病のようなものだったのだろう。

 そして僕は多少の印税を得て、世間には忘れられたようにこの三冊の単行本が残った。

 あの少年は、漫画家としての僕を知っている。平井健一ではなく、黒崎カラスとしての僕を。
 僕は「M.A.D.POLICE STATION」以外の作品を、以降黒崎カラス名義では発表していないし、特に青年誌の読み切りなどでは本名を使っている。「過去の遺物作家」の作品だと思われたくないからだ。できれば、新たに評価を得たい。だがあの頃のようなラジカルなエネルギーも、アイデアの泉も、今の僕にはもうない。それこそ、ヌードとか暴力とか、そうした刺激的な描写で、雑誌の隙間を埋めているだけだった。

 五年以上も前の「M.A.D.POLICE STATION」を、あの少年がリアルタイムで読んでいたとは考えにくい。それは幼すぎる。たまたま僕の作品が載っていた少年誌をその子が読んでいたとしても、目当ての作品はもっと別のものだったはずだ。

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