僕は知っている
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成人向完結
発行者:とりさん
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/18
最終更新日:---

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僕は知っている 第1章 第一章 僕と電話の少年
 居間に置いてある電話が鳴ったとき、僕は遅い昼飯にとインスタントラーメンにネギを加えて鍋で煮込んでいるところだった。仕上がり寸前に卵を入れれば完成、というところで、僕は麺の硬さを確かめていた。このままこの場を離れてしまったら、確実に麺は煮込みすぎになってしまうだろう。

 でも僕は、電話を取りに行った。それは仕事の電話かもしれなかったからだ。

 僕は三十七歳で、肩書きは漫画家。だけど実際は求職中で、どちらかと言えばひまな毎日だ。漫画の仕事は時々しか来ない。年下の漫画家の下でアシスタントなんかもやっていたこともあるけれど、最近体力が続かなくて辞めた。失業保険はあと二ヶ月ほど残っているけれど、蓄えはほとんどない。僕の未来とやらの見通しは、決して明るいとは言えなかった。

 たまの仕事の依頼に、アポなしで編集者がうちにやって来ることなどまずない。僕は現在一人のアシスタントも雇っておらず(雇える状況にあらず)、ひとり暮らしで家にいるものかいないものか、あらかじめわかるはずがなかったからだ。

 七回ほどベルを鳴らして、僕は電話を取った。
「もしもし、黒崎先生?」
 僕はがっかりして、続いて少し戸惑った。電話の声が、思春期寸前の、ちょっと掠れた男の子独特のボイスだったからだ。その声は僕の欲望をくすぐるに十分な魅力を備えていたが、同時に仕事の電話ではないことははっきりしていた。
 間違い電話に決まっている。僕には何人かの少年の知り合いがいたが、電話なんてまずかけてこないし、その子たちは僕を黒崎とは呼ばない。なぜなら僕はペンネームを「黒崎カラス」といい、本名はそれとは縁もゆかりもない平凡な名前で、少年たちが知っているのはそっちの方の名前だからだ。それに知り合いの声は、いくら年頃が近い少年だろうと、たぶん区別がつく。
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