Miss Terry のノート
第12章 第三話 顔①
間もなくして次の駅に到着した。恭子は人ごみに紛れて駅に降り立った。毎日通る駅だが、初めて降りる駅だった。どっちに改札口があるかも分からない。キョロキョロしていると男に見つかりそうなので、人の流れについて身を任すしかなかった。恭子は、電車から出てきた人の波に合わせて階段を下り始めた。まさか、あの男がついて来るはずはない。そう思いながらも不安が募り、さりげなく後方を向き直して見ると、なんとあの男も一緒に降りていた。まだこちらには気づいてないようだが、辺りをキョロキョロと眺めていた。確実に自分を探している…恭子は背筋に悪寒が走った。
(ヤバい!)恭子の心が危険を察知した。そして、気づかれぬように階段を駆け降りた。
28