Miss Terry のノート
第1章 第1話 紺のブレザーの幽霊
第1話 紺のブレザーの幽霊【序】
ある晴れた休日の夕方、久しぶりに妻と昔ながらのこの街を散歩した。若い妻は俺に腕を回してきた。俺はまるで恋人のような姿に照れくさく思った。
しかし、ある交差点に差し掛かったころ、俺は遠い昔の記憶がよみがえってきた。
「そう言えば…。」
「何?」妻は俺の顔を見上げて尋ねた。
「俺、幽霊見たことあるんだ。」
「やだ、えっ、いつ?どこで?」さっきまで穏やかだった妻の顔が急に曇った。
俺は立ち止まった。すると妻もあわせて足を止めた。
俺は交差点を一望できる位置から目の前のコンビニに向かって指をさした。「あそこだ。」
妻は顔が引きつらせてコンビニを見た。
「だから、俺、あのコンビニに一回も入ったことないんだ。」
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