好きになったヒト
好きになったヒト
成人向完結
発行者:iroha
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2011/09/09
最終更新日:---

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好きになったヒト 第10章 未練4
「なんか、さいきんおまえ楽しそうだな。」
喫煙室でたばこを吸っていると、先輩に掴まった。

「そうですか?」
俺は何気なく返す。

「この前の凹みぶりはどこへ行ったんだ。」

「ああ、なんとか乗り越えました。」

「で、なんだったんだ。もう話せるんじゃねえの?」

どう答えるべきか一瞬考えたけれど、口を吐いて出たのは
「恋煩いです。」
だった。

「は・・・?」
先輩のぽかんとした間抜け面に俺は噴出した。

「なんだって?」
先輩は聞き返してくる。

「聞こえてたでしょう?」
俺は面倒くささを全面に出して言う。

「誰に、だよ?」

「先輩の知らない人ですよ。」
先輩の呆気にとられた顔はなかなか元に戻らない。言わなきゃよかったかなと少し後悔する。

「で?」

「で?でってなんですか?」

「つまり、上手くいったってことなんだよな?」

俺は首を振る。

先輩の顔が元に戻る。俺が失恋でああなってたと解釈したんだろう。状況的には失恋みたいなもんなのであながち間違いではないし、それ以上詳しく話すつもりもないので俺は何も言わなかった。

「まあ、元気出せよ。」

「元気ですよ。この通り。」
俺は先輩を見てにこっと作り笑いをする。

「好きなやつがいたんなら、そう言えばいいのに、そしたら俺だって竹田さんを押したりしなかったのに。」

「いえ、自分でもよく解ってなくて、すんません。」

先輩の俺を憐れむような視線が痛い。
参ったな。今の俺はそこそこ幸せなんだけどな。

「今日、飲みに行くか。」

「はい。先輩の奢りなら。」

「ああ、奢ってやるよ、今日くらい。」

最初はキツい人だと思ってたけど、なかなか情深い人なんだな。
何だかんだ言ってけっこう気使ってくれてる。この前の俺が酷過ぎたってのもあるんだろうけど。
そういや、大学の連中にもそんなこと言われたっけ。
ホント俺はどうしょうもねえな。

先輩と飲んで帰る電車。先輩が降りて行ったので、俺はイヤホンを耳につけてマナトの歌を聞く。
マナトの声が耳に心地いい。

電車を降りて駅の改札を出たところで、携帯を取り出す。
電話帳を開きマナトの番号を表示する。
掛けてみようか。
あいつは出てくれるだろうか。

ふと自分が酔っていることに気が付いて、携帯を閉じる。
酔った勢いでなんて、駄目だ。もっとちゃんと向き合わないと。
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