好きになったヒト
好きになったヒト
成人向完結
発行者:iroha
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2011/09/09
最終更新日:---

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好きになったヒト 第10章 未練4
「さっきから、なにを見てんだ?」

一緒に残業をしていた先輩が俺の背後から声を掛ける。
俺はビクッとする。
しまった。

気になって席を立つたびに、いや、やたらと席を立って窓の外を見に行っていた。

「なんか面白いもんでもあんのか?」

先輩が俺と同じように、ブラインドの隙間から外を見る。

「ああっと、いえ。なんでも・・・。」

「うん?なんでもって感じじゃねえだろ。」

「えっと、その、ちょっと天気が気になって。俺今日傘持ってなくて。」

「はあ?今日は昼間っから晴れてんぞ。夜雨っつってたか?」

「いえ、ちょっと寄りたいところがあったんで・・・。」

「残業終わりに?」

「はい・・・。」
説得力ねえの。

先輩は俺に不審な目を向ける。

残業を終えて先輩と一緒に会社を出る。
正直ドキドキしながら、ビルを出たけれど横断歩道の向こうにもうマナトの姿はなかった。
時間は10時を過ぎてた。さすがに帰ったか。

「どっか寄るんだっけ?」
先輩が意地悪くうれしそうに言う。

「えっ、ああ、また今度にしようかな。」

「竹田さんとどうなんだ?」

「はい?」

「この前二人で飯食ってるの見たって聞いたけど。」
なんつう情報網。

「ああ、たまたま帰りが一緒になったんで・・・なんもありませんよ。約束してた訳でもないですし。」

「それ、たまたまじゃねえんじゃねえの?」
そんなこと解ってるよ。

「さあ、飯くらい行くでしょう。先輩とだってよく行くじゃないですか。」

「おまえ、俺をおちょくっとんのか。」
ああ、怒られた。

「すんません。いい子だとは思うんですけど・・・。」

「おまえは堅く考え過ぎなんだよ。とりあえず付き合ってみたらどうだ?案外しっくりくるかもしんねえぞ。」

「はあ・・・。」
しっくりね・・・。来るわけねえよ。俺の頭ん中、他のやつで一杯なのに。

それからもマナトは何度も俺の会社の近くに来ていた。
その度に俺は気が気じゃなくて・・・でも、声を掛ける勇気はなくて。
俺に会いに来てるんだと思いたい。

『もうそろそろ応えたら
 どんなに耳を塞いでも
 雑踏の中でも』

いつか訊いたマナトの歌が耳の甦る。
一度聞いたきりのあの曲が、ふいに甦って、なんどもループする。

仕事中も気を抜くと、マナトのことを考えてる。

マナト。俺に会いに来てるのか。
自信がない。
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