好きになったヒト
好きになったヒト
成人向完結
発行者:iroha
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2011/09/09
最終更新日:---

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好きになったヒト 第9章 未練3
その日から俺は仕事の合間を縫ってユズルさんの事を調べ始めた。
わざわざ調べなくてももっと簡単な方法があったけれど、それをする勇気はなかった。
もっと簡単な方法。
ユズルさんの家の前で張って尾行すればいい。
でも、あの人を見てしまったら俺はどうするんだろう。
ずっと会ってないし、なんて言えばいいかわからない。
遠巻きに調べて、徐々に距離を埋めたい気分だった。

ユズルさんの評判は悪くはないが、どこへいっても遊んでると言われた。

痛々しかった。もともとそういうタイプの人じゃない。
女の子が作って来てくれたお菓子だって断れずに貰っちゃうし。
特定の相手はいなかったようだけど、はたしてそれがいいことなのか悪いことなのか。
ユズルさんの勤め先を知るまでそう時間は掛らなかった。

俺は出先から直帰するとタカヤさんに連絡を入れて、ユズルさんの会社の前の向かいの通りからビルの入り口を眺めていた。
つまり、ユズルさんが出入りするのを待っていたのだ。
初日は見つけられなかった。
その後も仕事が忙しくないときには足を運んだ。

3度目、ビルから出て来るユズルさんを見つけた。
スーツがよく似合ってる。
以前と変わらない風貌。
同僚だろうと思われるスーツ姿の男性と一緒に帰って行った。
俺は歩いて行くユズルさんの姿をずっと見ていた。

よかった。元気そうで。そんな安心が胸に沸いた。
正直、ユズルさんを見たらどんな気持ちになるのかわからなかったけれど。
胸がジンと熱くなった。
火が灯るというか、暖かいものが再び胸に宿った感じがした。

声を掛ける勇気はない。
けど、それからも俺はときどきユズルさんを見に行った。

ユズルさんを見に行って、ユズルさんとの思い出の場所へ行って、未練がましいけれどそうでもしないと自分を保っていられなくなりそうだった。

大丈夫だと思えるときもある。
でも、俺が動かなければきっともうずっとこのままだ。
動きたい。けれど、まだその時ではないように思える。
ユズルさんはいまはきっとまだ忙しい。
落ち着くまで待とう。

ある日、ユズルさんはかわいい女の子と一緒に会社を出て帰って行った。
楽しそうに話しながら。
やっぱ、そっか。
特定の相手はいなかったという噂に俺はどこかで胡坐をかいてたのかも。
俺のことがあってそうなんだって。
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