好きになったヒト
第8章 未練2
ふうん。ほんとかわいい。顔がかわいいだけじゃなくていい雰囲気の子だな。人気があるわけだ。
「あの、よかった今日みんなでごはんに行くんです。よかったら一緒にどうですか?」
「え、ああ。いいですよ。仕事が早く終わったらでよければ。」
「ほんとに。じゃあ、これ私の携帯です。終わったら連絡ください。」
彼女は携帯番号とメアドを書いたメモを渡すと帰って行った。
それが目的だったのか。
「みーたーぞー。」
背後から低い声。
俺はビクッとして振り返る。
先輩だ。
「な、なんですか。」
「いいねえ。男前は。」
「あー、先輩も一緒にどうですか?みんなでごはんですって、俺一人じゃちょっと。」
「えっ、いいのっ。」
「はい。先輩行かないなら断ります。」
「何ってんの、行くってば。佐々木おまえ、いいやつだな。」
先輩の並々ならぬ意気込みのお陰で仕事は早く終わって、“みんなでごはん”という名の飲み会に合流。男性も数名来ていた。
他部署の人達とはあまり交流がなかったけれどお近づきになるいい機会になった。
途中まで先輩と同じ電車で帰る。
「あの子ほんとかわいいな。」
「竹田さんですか?
「うん。」
「そうですね。」
「今フリーだってさ。」
「へえ。」
「チャンスだな。」
「頑張ってください。」
「はあ?おまえだろ。」
「え、なんで、俺なんですか。」
「向こうはおまえ狙いだろ。わざわざあの子が声掛けにきたんだから。」
「いや、俺はいいですよ。タイプじゃないし。先輩どうぞ。」
「・・・。おまえがわからん。」
「わかんなんくていいですよ。」
俺は適当に笑って流す。
「どういう子ならいいんだ?」
「え・・・。」
「言ってみろ。」
「えっと・・・。」
「なんだ、彼女はタイプじゃないんだろ。」
「ああっと。」
マナトの顔が頭に浮かぶ。
「もうちょっと、こう。背が高くて、髪が短くて、でもかわいくて・・・」
そのまま形容してみた。
「なんだ。結局外見か・・・。もっとこう活発な感じが好きなのか。」
「いや、そういうわけでは・・・なんか、難しいですよね。ただ、彼女は違うかなって、それだけです。」
先輩はふうんっと納得したようなしないような顔で俺を眺めていた。
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