好きになったヒト
第8章 未練2
「な、なにしてんだ。おまえ・・・。」
「この一回で忘れさせてやるよ。ぼろぼろのおまえみてらんねから。」
松本の真剣な目が俺を見下ろす。
忘れる?忘れられるのか。こいつとヤれば。
首筋に舌が這う。
「女とヤってても忘れらんねえんだろ。だったら・・・」
松本の手が俺の身体を這う。
何とも言えない嫌悪感。
それを必死で堪える。
ズボンの中に松本の手が滑り込んで、触れて来る。
「う、、、、。」
松本の動きが止まる。
「・・・おまえ。」
俺ははっとしてギュッと瞑っていた目を開ける。
はらはらと冷たいものが頬を伝った。
あ・・・俺。
「なんだよ、それは。」
松本の呆れた顔が俺を見下ろす。
「あ・・・」
「どこのかわい子ちゃんだ、おまえは。」
松本は俺の上から退いて、隣に寝転がる。
恥ずかしすぎる。
「もうしねえよ。やっぱそいつだけなんだな、おまえ。」
「ごめん。」
そう答えるのが精一杯だった。
酔っていたとはいえ、ノーマルの松本がなんであんな気を起こしたのかは不明だが。
その後は何もなかったようにそのまま眠って、朝起きると元の友達同士に戻っていた。
なんとも器用なものだ。
3月に研修を終えて、4月から各部署へ配属。
俺の配属は自宅から通える範囲だったので、また実家暮らしだ。
そろそろ家を出たいという気持ちもあるが家賃の事を考えるとなかなか。
マナトと二人で暮らそうって言ってのに・・・。
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