好きになったヒト
第8章 未練2
飯を食って礼を言って、一応口止めをしてアパートを出る。
なんで言っちまったんだろう。
だから、しょうがないだよって分かってほしかったんだろうか。
マナト・・・。ずっと会ってないのに、今も俺はおまえに飲み込まれそうだ。
後から聞いた話によるとあの時の俺の荒れ狂い様は半端なかったらしい。
仲間連中はそんな俺を見て、あんなことを言ったことを申し訳なく思ったらしく後日、リベンジ飲み会が開かれた。
今度は別の奴のアパート。
「みんな悪いなぁ。俺の為にー。」
俺は機嫌よくテーブルに酒を並べる。
「ああ、いや。あんな荒れると思わなくてな。」
「ああ、みんなサンキュな。でも、まあそのうち・・・・」
“忘れっから”そう言おうとして口をつぐんだ。
「佐々木?」
忘れられるのか?自問する。
「え?ああ、なんだっけ?」
「そのうちなに?」
一人が俺を促す。
「そのうち、俺を立ち直らせてくれる子が現れるさ。」
そう繋げた。
誰かが現れたとして、俺はマナトのことを忘れられるのか・・・。
自答が頭に浮かぶ。
勢いよくアルコールを喉に流し込む。
喉が妬けつく。
帰り道で松本と一緒になる。
こいつはアパートを引き払って今は女の家に居候してる。
いつもは違うが、今日は同じ方面へ帰るので他のやつと別れて二人で歩く。
「佐々木。今日泊めてくれよ。」
「はあ?なんで?うち実家だぞ。」
「知ってるよ。今日女の友達が来てて帰りづらいんだよ。」
「ああ、そういうことか。いいけど。」
「まじで?」
「ああ、でも親いっから、いい子にしてろよ。」
「へいへい。言ってみるもんだな。」
うちの近くの駅で降りて、コンビニで酒とつまみを買って俺の家へ向かう。
二人ともシャワーを浴びて、ビールを開ける。
俺はいっきに飲みほして、仰向けにベットに倒れ込んで目を閉じる。急激に酔いが回る。
「ういー。」
「なにしてんだ。おまえ。」
松本が俺をみてははっと楽しそうに笑う。
「うーん。誰かが家にくんのって久しぶりだ。」
俺は素直な感想を言う。
ギシッとベットが軋む音。
目を開けると松本の顔が真上にある。
「なに・・・してんだ。」
「さあ、なんだろうな。」
そっと唇が重なる。
「・・・っつ・・・ん。」
舌が絡みついて来る。
マナトの顔がぱっと頭に浮かぶ。
俺は松本の身体を押し戻す。
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