好きになったヒト
好きになったヒト
成人向完結
発行者:iroha
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2011/09/09
最終更新日:---

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好きになったヒト 第7章 未練1
土曜日。今日は夕方からアツキさんと新曲の打ち合わせの予定。
それまでに歌詞を書かないと。
以前にいくつか書き溜めていたものに目を通す。
だいぶ前のものなので、そのころの心情がよく出てる。
荒んでたな、俺。
辛かった、あのころ、不満や不安を持っていく場所がなくて。普通ならグレたりするんだろうけど、妙な理性が残っていてそういう方向にはいかなかった。でも、どこかで何かが暴走した。それでも俺はなんとかしたかったんだ。自分でなんとかしてやるって、誰も頼らずに自分の力で何とかしてやる、そう思った。

そんなようなフレーズが多い。
ほんとガキだったよな。自分でおかしくなって笑いが込み上げる。

結局失敗して、藤原さんに出会って救われた。
藤原さんは、掴まっても顔色一つ変えない俺をボコボコに殴った。
殺されるかと思った。
殺してくれと思った。
藤原さんは何か言った訳じゃない。
あの人はあの時の俺にはどんな言葉も届かないと思ったんだろうな。

殴られた時は、殺してくれと思った。このまま楽にしてくれって、でももちろん殺される訳もなく、その後体中があり得ないほど痛くて治るまで何日も傷が疼いた。
藤原さんはその間俺をずっと見守っていてくれた。咎めるでもなく、諭すでもなくただ傍に居てくれた。

親にはちょっと障害事件に巻き込まれたのでしばらく保護しますと上手いこと言ってくれた。

痛かった。でも、俺はまだ痛みを感じるんだと分かった。生きているんだと。

怪我ってそんなにしたことがないけれど、治るのに時間が掛るものなんだということも分かった。直るまで気になっるし思うように身体は動かせないし、不便なもんなんだな。

帰る俺に藤原さんは言った。
「マナト。その命自分ひとりのものだと思うな。俺はおまえに情けを掛けた。その時点でおまえがどう言おうと、おまえは俺の情けを背負った。いいな。俺の掛けた情けをおまえが生かすんだ。俺とおまえは親子でも兄弟でもない。だけど、おまえの遺伝子にはもう俺の情報が書き込まれたんだ。それを生かして、そして繋げろ。そういう生き方をするんだ。」

そういって俺を見詰めた藤原さんの顔。
あの人がいたから今の俺はいる。
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