好きになったヒト
第7章 未練1
広げていた書類を脇に避ける。
俺は早速食べ始める。
「おまえがそんながッついて食べてんの珍しいな。」
「え、ああ。そうですね。確かに。なんか今日は腹が減って。」
「にしても、でかくなったよな。おまえ。」
「え?」
「初めて会ったときは、まだガキの顔してたのに。成長したよ。」
「そう、ですか?まあ、背は伸びましたね。」
「うん、最初会ったときは怯えた顔してたけどな。」
「はは、なんですか。怯えてないですよ。」
何を言うんだこの人は。
「怯えた顔してたよ。」
タカヤさんはもう一度繰替えす。
怯えて、いたかもしれない。世の中を恨んでた。そんなもんだと思いながらも、どこかでどうして自分だけがって思っていた。
「じゃあ、タカヤさんが恐かったんじゃないんですか?」
「俺?まさか、俺みたいなやさしいお兄さんいないぞ。確かあのとき、ユズルもいたな。」
藤原さんに連れられて、初めて事務所へ行った時のことを思い出しす。
ああ、そういえばあの時、タカヤさんとユズルさんとユミさんがいた。
「ユミさんもいましたね。懐かしいな。みんなどうしてるんでしょうね。」
「結局、ユズルには声を掛けなかったんだ。」
ユズルさんの名前に過剰に反応しない様に気をつけて、何気なくタカヤさんを見る。
「どうしてですか?」
「あいつには、残留を断られたから、今さらまたこっちにひっぱるのはどうかと思ってな、最終まで悩んだんだが。あいつがいてくれると助かるし。」
「そうですね。」
「あいつは俺ともおまえとも違った視点を持ってるから」
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