好きになったヒト
第7章 未練1
いつものようにフロアへ顔を出す。
アツキさんの傍へ行く。
「お疲れさん。」
「どうも。」
「これ新曲。」
CDを渡される。
「ありがとうございます。」
「一応おまえの歌詞付けてあるけど、今度時間あるときに直し合わせしよう。」
「はいっ。やった。アツキさんの声聴けるのもうれしいんですよね。」
俺は素直な喜びを伝える。
「なんだよ、やめろよ。声入れらんなくなるだろ。」
「いいじゃないですか。アツキさんも歌えばいいのに。俺とコラボしましょう。」
「やだよ。」
アツキさんは本気で嫌そうな顔をする。
いい声してるのに、もったいない。
「今度っていうか、時間あったら今からどうですか?スタジオ開いてると思うし。」
「そうだな。おまえがいいなら。」
二人でスタジオに移動。
アツキさんの曲は最高。
一緒にあれこれ言いいながら、直しを入れていく。
すごいな、アツキさん。
やっぱ、この人はいいセンスしてる。
アツキさんの指がギターの絃を弾く。
それに合わせて、聞いたばかりのメロディを口ずさむ。
アツキさんの声が重なる。
自分が書いた歌詞だけに、切なくなってしまう。
アツキさんがいなかったら泣いてしまっていたかも。
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