好きになったヒト
第6章 恋愛5
何度かアツキさんのところへ足を運んで、新曲の催促をした。なんとかメロディは一緒に考えてくれることにはなったけれど、作詞と編曲は俺も一緒にやるようにいわれた。
作詞か・・・久々の作業に少し懐かしさを覚える。バンドをでボーカルをとってたころはあたりまえに書いていたけど、藤原さんにあったころからバンドも抜けたしいつの間にか書かなくなっていた。
携帯を開いて、適当なフレーズを打ち込む。
ユズルさんから連絡は来ない。
ユズルさん、俺のことなんか忘れてしまったんだろうか。
就活が忙しいのはわかるけど。
このまま俺のことは終わりにするつもり?
俺がどんなにあなたを好きか知ってるはずなのに。
ユズルさんが今俺といるのが辛いというなら、それでいい。俺も余裕がなかったのかもしれない。もう一度俺といたいと思って貰えるまで待ってる。
涼しげな笑顔、俺をやさしく受け止める寛容さ。
あの笑顔を守りたいのに、傍にいてほしい。
ユズルさんはもう戻る気がないのかもしれない。
十分ありえることだ。だったら、俺はどうする?
目を閉じる。
わからない。それでもユズルさんのことが好きだ。
この気持ちはどうすることもできない。
藤原さんのときのように自分が打ちひしがれていないことを自分でも不思議に思うけれど、それはたぶんまだユズルさんが戻って来ると、心のどこかで思っているから。
本当に戻らないとわかったとき、俺はまた壊れてしまうかもしれない。
そしたら、どうなるんだろう。
ユズルさんを想わない日はない。
どうか、応えて、俺の声に。
新曲の歌詞はユズルさんのことを想って書いた。
アツキさんに見せるのが少し恥ずかしい気もするけれど、せっかくの新曲だし、どうせなら自分の気持ちを込めたものを歌いたい。
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