好きになったヒト
第4章 恋愛3
歌い終わって、フロアに顔を出す。
アツキさんがいる。
「お、お疲れ。」
「ありがとうございます。」
「どうした?」
「え・・・、駄目でした?けっこうちゃんと練習したんですけど。」
「いや、なんか。おまえの心境そのまま歌に出てた。」
「・・・すみません。」
「そんなもんだ。」
ははっとアツキさんは笑う。
「そうだ。アツキさん。歌書いてくれません?確か書いてましたよね。」
「はぁ?何年前の話ししてんだ。」
「いいじゃないですか。新曲ほしいんですよ。」
「ムリムリ、他当たれ。」
「アツキさんに書いてほしいんです。」
「おまえ、自分で書けるだろ。」
「いつも不採用だったの知ってるくせに、意地悪ですね。」
「はは、そういやそうだったな。でも、歌詞は書いてたよな。」
「そうですね。一応何曲かは。別に急いでないんで、やるだけやってみてくださいよ。」
アツキさんは答えない。
「頼みましたからね。」
ごり押し。
「今日はあの兄ちゃん来てねえな。」
「え?」
「さいきんいつも来てた。美形のおまえの友達。」
ユズルさんのことだ。
「ああ、一応連絡したんですけど。忙しいみたいで。」
「そっか。」
ユズルさんからは連絡はない。
やっぱあれで怒ったんだ。
ユズルさんがこんなに怒るなんて。
謝らないと。
でも、俺はそんなにおかしいことを言ったのか・・・。
ユズルさんと居たいと思うことがそんなにいけないことなんだろうか。
ユズルさんにとっては、負担・・・?
それを負担だと思うのなら・・・俺達は・・・。
いつもどうり打ち上げはパスして、ライブハウスを出る。
通りに出ると、意外なヒトが立っていた。
俺を見つけてにっこりと笑って手を上げる。
「タカヤさん・・・?」
28