好きなヒト
第13章 再生2
「わかった、もういい。好きにしたらいい。」
自分で思ったよりも、キツイ言い方になってしまった。
「ちょっと、待ってください。」
「いいって、俺が口出しすることじゃないんだ。」
自分に言い聞かせるように言い捨ててしまう。
「ユズルさん、どうしたんですか。あの時は会いに行かなくていいのかって言ってたくせに。」
「あの時とは・・・違うだろ。」
あの時とは違うんだ。あの時はまだ。
まだ・・・?
マナトは俺をじっと見て頷く。
「そうですね、あの時とは違う。俺はあの時は会う勇気がなかった。でも今は違います。あの時は一人でそれに耐えきる自信がなかったから、だから恐くて会わなかった。でも、今は違う。今は俺にはユズルさんがいてくれる。あの時、俺を支えてくれたのはユズルさんです。ホントに感謝してます。ユズルさんが何気なく言った冗談だったけど、無二の親友だって言ってくれた。一人孤独に耐えてた俺は、その言葉がすごくうれしかった。」
そんなこと、言ったか?
全然覚えてない。
「甘えてますよね。すみません、でも、だからユズルさんには分かってもらいたいんです。」
わからねえよ。
なんでだよ。
俺はマナトの手をそっと掴む。
「わかんねえよ。俺が居るならいいって言うなら、行くなよ。」
見つめ合う。
俺は、何を・・・言ってる。
「ユズルさん・・・。」
マナトの戸惑った顔。
あ・・・。
俺は掴んだ手を離す。
「えっと、バイトあるから、行くわ。」
部屋を出る。
出たところで、人にぶつかりそうになる。
「おっと・・・あぶねえぞ、ってユズルか。」
「タカヤ・・・。」
ああ、タカヤだ。
「久しぶりだな、元気か?どうした、慌てて。」
変わらない、屈託のない笑顔を俺に向ける。
「ユズルさんっ。」
ドアが開く。
「じゃあ、またっ」
俺は走り出す。
「おい、ユズルっ。」
エレベータは使わずに階段を駆け下りる。
なんなんだ、何が起こった。
俺は・・・。
マナト・・・、タカヤ・・・。
わけがわからない。
なんなんだ。
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