好きなヒト
第13章 再生2
「もう?いつも夜からでしょう。」
いてほしいとでも言うような顔。心が揺れる。
「今日は、人がいないからって連絡があったんだ。」
「そうですか。わかりました。心配かけて、すみません。」
「・・・また、来るよ。」
俺は何をイラついてるんだ・・・。マナトのあの心細そうな顔、あんな顔してるのに置いてきてしまった。
でも、これ以上は俺が立ち入る問題じゃない。決めるのはマナトだと、自分に言い聞かせる。
二日後、結局二日間気になってしかたがなくて、事務所を訪れた。
「ユズルさん・・・・」
「おお、どうだ。」
「はい。」
「そうか。」
「いや、まだなんも言ってません。」
「うん。」
よくわらからない会話が続く。
「ユズルさん、今日ちょっと留守番お願いできませんか。」
「え?」
「俺、やっぱり会いに行こうと思うんです。」
やっぱり。
「そうか。でも、俺バイトあるから。」
「そうですか、じゃあ早めに閉めて出ます。」
「ああ、悪い・・・。」
俺が口出しすることじゃない。マナトが決めたことだ。マナトが会いたいって思うならそれでいい。
「昨日、藤村さんが来て藤原さん明日までだって、明日には帰るから会うなら早くしたほうがいいって、それに本当はまだ接触禁止だって。」
接触禁止ってことは、そもそも藤原さんが戻ってることも言っちゃまずいんじゃねえのかよ。藤村のやつ・・・気を利かせたつもりなんだろうけれど、いい迷惑だ。
マナトは藤原さんの事を責めない。いつもすべてわかってて自分が逃げたんだという。藤原さんもマナトの為を思って身を引いた。二人は想い合ってる。
それから大した会話もなく時間が過ぎる。
俺はずっと自分に、マナトが決めたことだと言い聞かせてる。
「俺、そろそろ行きますね。ユズルさんどうしますか。」
「えっ、ああ、そうだな。」
マナトの方を見る。
「ほんとに、行くのか?」
「・・・はい。」
「なんで?」
マナトは考えてる。
「会ってまたやり直すのか?」
「それは・・・。」
「あっちはいい大人だ。」
「だから、それを・・・」
「確かめて何になる?」
マナトが困惑顔で、俺を見つめる。ああ、だめだ。このままじゃ責めてしまうばっかりだ。
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